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自食作用
心臓を食い尽くす

AUTOPHAGY:
Eating Your Heart Out

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 265, pp. tw1, 4 January 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2652005tw1]

要約 : Kumaらは、胎児から新生児期への移行におけるオートファジー(細胞が自分自身の細胞質の一部を取り囲んで分解するストレス応答)の興味深い役割を解明した(Heintz参照)。生まれたばかりの哺乳類は、多くの困難に直面する。そのひとつは、胎盤からの供給を失ってから授乳を開始するまでの期間、適切な栄養供給を維持することである。Kumaらは、オートファゴソームを蛍光標識する分子マーカーを用いて、出生後のマウスの肺胞細胞および皮膚(外部環境が変化する)だけでなく、心筋および横隔膜(出生後にエネルギー所要量が増加する)においても、オートファジーの劇的な増加がみられることを示した。このオートファゴソーム数の増加は、出生後30分以内に現れ、3〜6時間で最大に達し(この時点までに授乳が始まる)、1日または2日以内に収束する。Atg5(オートファジーに必要なタンパク質)をコードする遺伝子を欠損したマウスは、出生時はほとんど正常にみえたものの、授乳しない条件のもとでは野生型マウスに比べ早く死亡した。Atg5-/-マウスの血漿および組織中のアミノ酸濃度は、出生時は正常であったが、10時間までに野生型マウスの濃度より低くなった。さらに、エネルギーセンサーのAMP活性化キナーゼ(AMPK)の活性は、Atg5-/-マウスでは10時間の絶食により亢進したが、野生型マウスでは亢進しなかったことから、AMP対ATPの比率が増加している(すなわち、エネルギー欠乏状態にある)ことが示された。以上より、オートファジー経路を介したアミノ酸の産生は、出生後初期のエネルギー恒常性において重要な役割を担っているようである。

A. Kuma, M. Hatano, M. Matsui, A. Yamamoto, H. Nakaya, T. Yoshimori, Y. Ohsumi, T. Tokuhisa, N. Mizushima, The role of autophagy during the early neonatal starvation period. Nature 432, 1032-1036 (2004). [PubMed]
N. Heintz, Survival by self-digestion. Nature 432, 963 (2004). [PubMed]

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