老化 新しい血を入れる

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Infusing New Blood

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Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 272, pp. tw69, 22 February 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2722005tw69]

要約 : 組織特異的幹細胞の細胞シグナル伝達経路の変化は、老化に伴う再生能の低下に関与すると考えられてきた。たとえば、筋幹細胞(サテライト細胞として知られる)におけるノッチ(Notch)シグナル伝達の減少は、老化した筋肉の再生障害と関連するのに対し、転写因子cEBP-αが細胞増殖を阻害する経路の変化は、老化した肝臓の再生能の喪失に関与する。Conboyらは、共通の循環系をもつマウスのペアを確立し、若齢の動物にみられる循環因子が、老化した前駆細胞の再生能に影響を与えるかどうかを調べた。老齢(19〜26月齢)マウスを若齢マウス(2〜3月齢)と組み合わせたところ、外傷後の老齢マウスのサテライト細胞からの筋再生が促進された。こうしたマウス由来の外植片のサテライト細胞は、ノッチリガンドであるデルタ(Delta)の発現が増加していた。デルタの発現は、ノッチ活性化や細胞増殖と同様、若齢マウスの血清の存在下で培養した老齢マウスのサテライト細胞においても増加していた。肝細胞増殖は、若齢マウスと組み合わせた老齢マウスにおいて亢進していたのに対し、cEBP-αと老化による肝細胞増殖能の喪失と関連するクロマチンリモデリング因子brahmaとの複合体の形成は減少していた。以上より、著者らは、若齢の動物において循環する全身因子は、組織特異的幹細胞の活性化に必要なシグナル伝達経路を調節する能力を持ち、それにより、老化した組織の再生能を高めるという結論に達した。

I. M. Conboy, M. J. Conboy, A. J. Wagers, E. R. Girma, I. L. Weissman, T. A. Rando, Rejuvenation of aged progenitor cells by exposure to a young systemic environment. Nature 433, 760-764 (2005). [PubMed]

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