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タンパク質ドメイン 2つでPHドメインを作る

PROTEIN DOMAINS:
It Takes Two to Make a PH Domain

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 274, pp. tw84, 8 March 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2742005tw84]

要約 : プレクストリン相同(PH)ドメインは、これらのドメインを持つタンパク質に特異的な脂質結合性を付与する。ところが、すべてのPHドメインが、現在の塩基配列解析法により容易に同定できるとは限らない。なかには、分子内で切り離されてPHドメインのN末端とC末端部分が不連続なものや、非コンセンサス配列により形成されるにもかかわらずPH様構造をとれるものもある。Van Rossumらは、TRPC3(陽イオンチャネルの一過性受容体ポテンシャルタンパク質ファミリーのメンバー)とホスホリパーゼC-γ1(PLC-γ1)が相互作用して分子間PH様ドメインを形成し、特定の脂質への結合を介してTRPC3チャネルの細胞膜への発現を制御すると報告している。TRPC3は、PH-cと呼ばれるPLC-γ1中の部分的PHドメインのC末端部分と相互作用する。著者らは、部分コンセンサス配列を標的タンパク質全体にスライドさせたのち、補完PHドメインを用いてPH様ドメインを検出するアルゴリズムを開発した。この手法により、PLC-γ1と結合することが知られているTRPC3残基のほか、PH様構造を形成することが知られているいくつかの他のタンパク質の特殊なPHドメインも同定された。in vitroで翻訳したPLC-γ1 PH-cペプチド、および野生型またはPLC-γ1 PH-cと結合できない変異型のTRPC3について脂質結合を解析した。野生型TRPC3およびPLC-γ1 PH-cがともに存在したときのみ、ホスファチジイノシトール4,5ビスリン酸(PI4,5P2)との結合が検出された。トランスフェクションされた細胞におけるTRPC3の活性および細胞表面への発現には,PLC-γ1結合と脂質結合の両方が必要であったが、これはいずれかを阻害する変異により、細胞表面のチャネル活性および存在量が減少するためである。このことは、分子間で形成される脂質結合性PHドメインが,TRPC3の表面発現を制御することを示す証拠となる。分子間PHドメインの形成は、従来型のPHドメインを持たない他のタンパク質の脂質制御のモデルともなり、このアルゴリズムは、こうした「見えない」PHドメインを検出するためのメカニズムを提供するものである。

D. B. van Rossum, R. L. Patterson, S. Sharma, R. K. Barrow, M. Kornberg, D. L. Gill, S. H. Snyder, Phospholipase Cγ1 controls surface expression of TRPC3 through an intermolecular PH domain. Nature 434, 99-104 (2005). [PubMed]

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