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神経科学 ニューロン再生の内因性因子、Bcl-2

NEUROSCIENCE:
Bcl-2, an Intrinsic Factor for Neuronal Regeneration

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 276, pp. tw106, 22 March 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2762005tw106]

要約 : Chen研究室による2つの最近の論文は、内因性のニューロン再生能を調べ、この能力において重要な役者として抗アポトーシスタンパク質Bcl-2を明示した。ところが、ニューロンが再生できるかどうかは物語の半分にしか過ぎず、ニューロンは許容的環境にもなければならない。これら2つのニューロン再生の要素を理解すれば、外傷や疾患による中枢神経の損傷を修復するための治療法を開発する上で役立つ。bcl-2の発現は、胚性中枢神経系において高く、発生や再生不能な表現型を獲得する過程で減少する。1本目の論文で、Choらは、Bcl-2Bcl-2tg)を過剰発現させた生後3日(P3)のトランスジェニックマウスの視神経を挫滅すると、網膜神経節細胞(RGC)が再生し、同側の脳標的へと軸策を伸ばす(通常の神経支配経路が対側方向であることと対照的である)ことを示している。一方、損傷がP5に生じると再生は起こらないことがかつて報告されている。Choらは、成体Bcl-2tgマウス由来のRGCは胎児の脳切片へと軸策を伸ばすが、この再生能は標的の脳切片の年齢に応じて減少し、P4より老齢の動物由来の切片へと伸長する神経突起はほとんどないことを示している。すなわち、再生能の喪失は、Bcl-2tgニューロンが再生できないことよりも、むしろ成長に非許容的な標的環境を反映しているようである。成長の阻害は、ミエリンマーカーの出現とは相関しておらず、CNSミエリンを欠損するマウスでは抑制されていなかった。ところが、2〜3か月齢の野生型またはBcl-2tgマウスの視神経を挫滅した直後にアストロサイト毒素であるL-a-アミノアジピン酸で処理したところ、わずかな(野生型)または活発な(Bcl-2tg)神経再生が観察された。以上の知見と、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)およびビメンチン(それぞれ成熟グリアおよび胚性グリアに関連する2つのタンパク質)を欠損するマウスのデータにより、老齢脳の損傷に対するグリア応答が、RGCを再生する非許容的環境の形成に関与していることが示された。

2本目の論文において、Jiaoらは、Bcl-2がニューロンに再生能を保持させるメカニズムを調べた。Bcl-2または関連タンパク質Bcl-XL(Bcl-XLtg)を過剰発現するP3マウスの視神経を挫滅したところ、野生型マウス由来のRGCに比べてアポトーシスが減少した。しかし、再生応答を示したのはBcl-2tgだけであった。Bcl-2を過剰発現する細胞およびBcl-XLtgを過剰発現する細胞は、いずれも野生型のRGCやPC12細胞に比べて生存が亢進したが、培養液中で神経突起の伸長が亢進したのは、Bcl-2tgマウス由来のRGCまたはBcl-2をトランスフェクトしたPC12細胞だけであった。小胞体(ER)への局在は、トランスフェクトしたP12細胞において、Bcl-2またはBcl-XL(ERを標的としたとき)が成長因子による神経突起の成長を可能にするために必要かつ十分であった。ERは、カルシウムシグナル伝達に関与しており、通常ERを標的とするBcl-2を過剰発現するPC12細胞は、ERのCa2+-ATPase(SERCA)阻害剤であるタプシガルジンでERからカルシウムを欠乏させ、その後細胞質内カルシウム濃度を測定したところ、ERカルシウム貯蔵が減少していた。実際に、ERカルシウム濃度と神経突起の成長との関係は、PC12細胞においてSERCA2bを過剰発現させると、Bcl-2を過剰発現する細胞において神経突起の成長が減少し、SERCAを阻害すると、神経突起の成長が増加することを示すことにより解明された。著者らは、SERCAの存在量を減少させてERへのカルシウムの再取り込みを阻害することにより、Bcl-2は神経損傷時の細胞質内カルシウム濃度を増加させるのではないかと提案している。このことは、Bcl-2を過剰発現するPC12細胞のカルシウム濃度を測定したところ、さまざまな刺激に応じて細胞質内カルシウム濃度が増加したことにより確認された。また、Bcl-2を過剰発現するPC12細胞において、転写調節因子CREBおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼERKのリン酸化が亢進し、CREBレポーター遺伝子の発現の活性化が亢進していた。ERKおよびCREB経路におけるシグナル伝達の亢進は、視覚神経を挫滅したBcl-2tg RGCにおいて観察された。以上より、Bcl-2は、抗アポトーシス性の役割および損傷後のカルシウムシグナル伝達に対するBcl-2の影響と関連した神経突起伸長の役割という軸策の再生を促進する2つの役割を持つようである。

K.-S. Cho, L. Yang, B. Lu, H. F. Ma, X. Huang, M. Pekny, D. F. Chen, Re-establishing the regenerative potential of central nervous system axons in postnatal mice. J. Cell Sci. 118, 863-872 (2005). [Abstract] [Full Text]

J. Jiao, X. Huang, R. A. Feit-Leithman, R. L. Neve, W. Snider, D. A. Dartt, D. F. Chen, Bcl-2 enhances Ca2+ signaling to support the intrinsic regenerative capacity of CNS axons. EMBO J. 24, 1068-1078 (2005). [Abstract] [Full Text]

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