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アテローム性動脈硬化 基質からのシグナル伝達

ATHEROSCLEROSIS:
Signaling from the Substrate

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 281, pp. tw150, 26 April 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2812005tw150]

要約 : 局所的な炎症反応に応じて形成される動脈硬化性プラークは、血流が阻害された部位において生じる。流体せん断応力は、内皮下層の細胞外マトリックス(ECM)への内皮細胞インテグリンの結合を促進し、核因子κB(NF-κB)シグナル伝達経路の活性化ならびにICAM-1(細胞間接着分子1)やVCAM-1(血管細胞接着分子1)などの標的遺伝子の転写を引き起こす。Orrらは、内皮細胞が各種のマトリックスタンパク質と優先的に結合する複数のインテグリンを発現することと、炎症により内皮下層ECMへのフィブロネクチンおよびフィブリノゲンの沈着が促進されることに着目し、せん断応力に対する応答の介在における内皮下層ECMの役割について調べた。内皮下層マトリックスの組成変化およびNF-κBの標的遺伝子の活性化は、動脈硬化による他の変化に先立ち、in vivoでは血流が阻害された部位において生じ、高脂肪食を与えてアテローム性動脈硬化を誘導したマウスで最も顕著であった。流体せん断応力は、フィブリノゲンまたはフィブロネクチン上で培養したウシ大動脈内皮(BAE)細胞において、NF-κBのp65サブユニットのリン酸化およびNF-κBの核移行を促進した。対照的に、インテグリンα2β1を介して作用するせん断応力は、コラーゲンで培養したBAE細胞において、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼの活性化を促進し、NF-κBの活性化は低下した。混合マトリックスで培養した細胞において、コラーゲンはフィブロネクチン依存性のNF-κBの活性化を抑制した。ところが、コラーゲンで培養しても、腫瘍壊死因子αに曝露した後のNF-κBの活性化は阻害できなかった。免疫細胞化学的解析により、インテグリン接着部位においてp38が局所的に活性化されると、局所的なNF-κBの活性化は阻害されるが、全体的なNF-κBの活性化は阻害されないことが示された。興味深いことに、フィブロネクチンで培養した細胞におけるNF-κBの活性化は、マトリックス構造を変化させてp38の活性化を促進するフィブロネクチン由来ペプチドで処理すると阻止されたことから、外的因子を用いて内皮下層マトリックスを改変することで、アテローム性動脈硬化を治療できる可能性が示唆される。

A. W. Orr, J. M. Sanders, M. Bevard, E. Coleman, I. J. Sarembock, M. A. Schwartz, The subendothelial extracellular matrix modulates NF-κB activation by flow: A potential role in atherosclerosis. J. Cell Biol. 169, 191-202 (2005). [Abstract] [Full Text]

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