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HIV-1治療 欠損したATMによる阻止

HIV-1 THERAPY:
Stopped by a Missing ATM

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 283, pp. tw173, 10 May 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2832005tw173]

要約 : Lauらは、ウイルスタンパク質ではなく宿主タンパク質を標的とすることで、HIV-1治療への新たな興味深いアプローチを試みた。宿主と病原体の分子的差異を標的とした病原体の薬理学的治療は大きな成功を収めることが多いが、一方、HIV-1を始めとする病原体はライフサイクルが短く変異速度も速いため、いずれも薬剤耐性株が出現することが極めて多い。ATM(毛細血管拡張性運動失調症変異)はDNA損傷応答に関与すると考えられているセリンスレオニンキナーゼであるが、Lauらは、ATMを欠損するマウス胚性幹細胞およびヒト線維芽細胞は、ATMを発現する細胞に比べ、HIV-1インテグラーゼ活性をもつ(HIV-1 IN+)ウイルスベクターの導入が非効率的であることを示した。同様に、ATMを欠損するヒトリンパ芽球を野生型のHIV-1に曝露したところ、ATMを有するリンパ芽球に比べ、ウイルスのp24抗原の含有量が少なかった。ATMを欠損する細胞のHIV-1 IN+の導入は、むしろ細胞死の増加と関連していた。HIV-1 IN+ベクターを感染させたリンパ芽球は、ATMを欠損するリンパ芽球やインテグラーゼを不活化した変異体(HIV-1 IND64V)に曝露した細胞に比べ、ATM経路が活性化していた(DNA損傷依存性の各種のリン酸化状態を免疫ブロット法により評価した)。KU-55933(2-morpholin-4-yl-6-thianthren-1-yl-pyran-4-one、低分子の競合的ATM阻害剤)は、リンパ芽球へのHIV-1 IN+の導入を阻害し、ヒトT細胞株と初代培養した血液単球の両方においてHIV-1の複製を抑制した。さらにKU-55933は、野生型のHIV-1株だけでなく薬剤耐性HIV-1株に対しても有効であった。以上より、低分子化合物によるATMの阻害は、ウイルスの薬剤耐性の問題を回避できる有力なHIV-1治療法となる可能性がある。DanielとPomerantzは、この研究をNews and Viewsで取り上げている。

A. Lau, K. M. Swinbank, P. S. Ahmed, D. L. Taylor, S. P. Jackson, G. C. M. Smith, M. J. O'Connor, Suppression of HIV-1 infection by a small molecule inhibitor of the ATM kinase. Nat. Cell Biol. 7, 493-500 (2005). [PubMed]

R. Daniel, R. J. Pomerantz, ATM: HIV-1's Achilles heel? Nat. Cell Biol. 7, 452-453 (2005). [PubMed]

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