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発生 対称と非対称を生じさせる

DEVELOPMENT:
Developing Symmetry and Asymmetry

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 284, pp. tw185, 17 May 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2842005tw185]

要約 : いくつかの種における最近の研究により、脊椎動物の胚の両側で生じる対称的かつ同調的な体節の発生は、既定の条件というよりも、むしろ非対称性を促進するシグナルの克服に依存することが明らかになっている。骨格を始めとする一部の脊椎動物のいくつかの構造は左右対称で発生するのに対し、心臓や胃を始めとするその他の構造は非対称で発生する。椎骨や肋骨、躯幹の骨格筋組織といった対称構造を生じる体節は、前方から後方へという順序で左右対称対として生じる(Hornstein and Tabin参照)。Kawakamiらは、ゼブラフィッシュのレチノイン酸(RA)産生を阻害すると、H+/K+ ATPase活性またはlrd(左右ダイニン)翻訳(ともに左右非対称性の発生に重要)が阻害されている場合を除いて、体節発生の偏った非対称性が生じることを突き止めた。H+/K+ ATPaseまたはNotch活性を阻害するか、lrd翻訳をダウン・レギュレーションすると、体節形成がランダムな非対称性になったことから、RAシグナル伝達は、非対称性を示す通常の信号に応じて側方化する可能性が示唆される。RA合成酵素RALDH2(2型レチンアルデヒド特異的脱水素酵素)を欠損するマウスは、偏った非対称の体節発生を生じる(Vermotらによる関連Science記事を参照)ことを示した研究から,VermotとPorquieは、培養したニワトリ胚においてRA産生を阻害しても、同様に偏った非対称の体節発生が生じることを突き止めた。ソニックヘッジホッグ(Shh)を含むビーズを移植して左右非対称性を逆転させたところ、体節形成における非対称の偏りも同様に逆転した。左右非対称性の逆転を可能にする変異をRaldh2の欠失とともに適用したところ、マウスにおいて、体節形成における非対称の偏りが同様に逆転することが観察された。以上より、これらの3種の動物すべてにおいて、RAシグナル伝達は、非対称の内部器官の発生を促すシグナルに応じて、非対称の体節形成を阻害する。
マウスにおいて、対称性の早期喪失は、結節と呼ばれる正中部の繊毛運動により生成される左方向への流体の流れを伴う。膜脂質を蛍光色素で染色し、結節を共焦点顕微鏡で可視化して、体節期1〜3の胚をタイムラプス画像解析することにより、Tanakaらは結節を越えて左方向に移動する膜に包まれた親油性の0.3〜5µmの構造体を観察した。これらの結節小胞粒子(NVP)の微絨毛からの放出および移動は、線維芽細胞増殖因子(FGF)のシグナル伝達を遮断すると阻害された。ShhおよびRAはNVPに会合することが免疫組織化学法により示された。さらに、FGFシグナル伝達の阻害下では、ShhとRAはNVPの流れを回復させることができた。以上より、FGFにより移動しはじめるNVPは、結節を越えてShhやRAなどのモルフォゲンを輸送する渡し船のような役割をするのではないかと著者らは提案している。

Y. Kawakami, A. Raya, R. M. Raya, C. Rodriguez-Esteban, J. C. Izpisua Belmonte, Retinoic acid signalling links left-right asymmetric patterning and bilaterally symmetric somitogenesis in the zebrafish embryo. Nature 435, 165-171 (2005). [PubMed]

J. Vermot, O. Porquie, Retinoic acid coordinates somitogenesis and left-right patterning in vertebrate embryos. Nature 435, 215-220 (2005). [PubMed]

Y. Tanaka, Y. Yasushi, N. Hirokawa, FGF-inhibited vesicular release of Sonic hedgehog and retinoic acid in leftward nodal flow is critical for left-right determination. Nature 435, 172-177 (2005). [PubMed]

E. Hornstein, C. J. Tabin, Asymmetrical threat averted. Nature 435, 155-156 (2005). [PubMed]

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