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RNAプロセシング 細胞質でスプライシングされる

RNA PROCESSING:
Spliced in the Cytoplasm

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 297, pp. tw295, 16 August 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2972005tw295]

要約 : Denisらは、前駆体mRNA(pre-mRNA)および機能的スプライセオソームが血小板の細胞質に存在し、さらにこの細胞質におけるpre-RNAのスプライシングが血小板活性化に起因するシグナルによって調節されることを予想外に発見した。有核細胞において、翻訳されないイントロンは、新たに転写されたpre-mRNAからスプライセオソーム(核内低分子リボ核タンパク質と補助タンパク質を含有する核内複合体)によって除去されて,翻訳可能なmRNAが生じる。その後、このmRNAは核外へと輸送される。このように、巨核球から出芽した無核の血球である血小板がスプライセオソームの成分やpre-mRNAを含有するとは、誰もが予想していなかった。しかしDenisらは、スプライセオソームの成分(タンパク質と核内低分子スプライシングRNAの両方)がヒト巨核球の細胞質だけでなく、循環血小板中にも存在することを突き止めた。インターロイキン‐1β(IL-1β)pre-mRNAは休止血小板の細胞質(および血小板を生成する前血小板になる巨核球の細胞質)に存在していたのに対し、トロンビンの存在下でフィブリノゲンに付着することによって活性化された血小板は成熟したIL-1β のmRNAとタンパク質を含有していた。実際に、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(RT-PCR)によって、血小板活性化後のIL-1β pre-mRNAの経時的減少と1L-1β mRNAの増加が明らかになった。また、in vitroで転写されたIL-1β pre-mRNAは、血小板抽出物の画分によってmRNAにスプライシングされた。このように、pre-mRNAのスプライシングは血小板の細胞質において起こるだけでなく、血小板活性化後のサイトカイン産生を調節する機構でもある。MeshorerとMisteliは、その背景をPreviewで解説し、pre-mRNAスプライシングが他の細胞の細胞質においても起こる可能性について推測している。

M. M. Denis, N. D. Tolley, M. Bunting, H. Schwertz, H. Jiang, S. Lindemann, C. C. Yost, F. J. Rubner, K. H. Albertine, K. J. Swoboda, C. M. Fratto, E. Tolley, L. W. Kraiss, T. M. McIntyre, G. A. Zimmerman, A. S. Weyrich, Escaping the nuclear confines: Signal-dependent pre-mRNA splicing in anucleate platelets. Cell 122, 379-391 (2005). [PubMed]
E. Meshorer, T. Misteli, Splicing misplaced. Cell 122, 317-318 (2005). [PubMed]

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