• ホーム
  • イオンチャネル 受容体活性化への経路

イオンチャネル 受容体活性化への経路

ION CHANNELS:
A Path to Receptor Activation

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 310, pp. tw401, 15 November 2005.
[DOI: 10.1126/stke.3102005tw401]

要約 : 神経伝達物質は、シナプス間隙を介して拡散してリガンド依存型イオンチャネルとして作用するシナプス後受容体に結合し、ニューロン間の迅速なシグナル伝達を仲介する。ところが、リガンドの結合(膜貫通チャネルドメインから少し離れた部位で起きる)がチャネル開口に変換されるメカニズムは明らかでない(Czajkowski参照)。2つのグループが、リガンドの結合がニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)および5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)3型(5-HT3)受容体(いずれもリガンド依存型イオンチャネルのCys-ループファミリーに属する)を活性化するメカニズムを解明しつつある。有望なアミノ酸残基を同定するためにシビレエイ(Torpedo)nAChRの原子スケールモデルを用いて、LeeとSineは、単一チャネル記録法と変異解析とを組み合わせて、リガンドの結合をチャネルの開口に結びつける一連の相互作用するアミノ酸を明らかにした。この連鎖経路のアミノ酸のひとつにプロリンがあり、Lummisらが研究の対象としたのは、5-HT3受容体の同じ部位(M2、M3膜貫通へリックス間のループの先端部)にあるプロリンであった。プロリンはシスあるいはトランス型のいずれかのコンホメーションをとることができる。このプロリンをシス・トランスコンホメーションの選択性が異なるアナログで置換した変異受容体を発現させたアフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞に対して電位固定法による解析を行うことにより、シスコンホメーションに対する選択性が開口状態を好むのに対して、トランスコンホメーションに対する選択性が非機能性の閉チャネルをもたらすことをLummisらは突き止めた。以上より、リガンド結合がプロリンのトランスからシスコンホメーションへの移行およびチャネルの開口をもたらす一連のアミノ酸の移動を開始することを、これら2つの研究の成果は示している。

W. Y. Lee and S. M. Sine, Principal pathway coupling agonist binding to channel gating in nicotinic receptors. Nature 438, 243-247 (2005). [PubMed]
S. C. R. Lummis, D. L. Beene, L. W. Lee, H. A. Lester, R. W. Broadhurst, D. A. Dougherty, Cis-trans isomerization at a proline opens the pore of a neurotransmitter-gated ion channel. Nature 438, 248-251 (2005). [PubMed]
C. Czajkowski, Neurobiology: Triggers for channel opening. Nature 438, 167-168 (2005). [PubMed]

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ