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加齢 Sir2は寿命を延ばすのではなく、寿命を縮める

AGING:
Sir2 Increases--No, Make That Decreases--Life Span

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 311, pp. tw411, 22 November 2005.
[DOI: 10.1126/stke.3112005tw411]

要約 : 生化学的シグナルが加齢に対してどのように影響を及ぼすのかを理解するのは、やや複雑になった。酵母においてSir2遺伝子がコードするヒストン脱アセチル化酵素は、分裂寿命を延長する。分裂寿命とは、1つの母細胞が産生できる娘細胞の総数として測定される寿命である。加齢を測定するためのもうひとつの方法は、細胞が有糸分裂でない状態で生存する時間、すなわち世代寿命を測定することである。Fabrizioらは、Sir2の欠失だけでは世代寿命に影響を及ぼさないことを報告している。ところが、世代寿命を延長する2つの酵母変異体との関連で解析したところ、Sir2の予期せぬ老化促進性作用が明らかになった。プロテインキナーゼAktの酵母ホモログの欠失やカロリー制限は、いずれも酵母における世代寿命を延長する。これらの条件下では、Sir2を欠失させると寿命はさらに延びる。Fabrizioらは、これらの作用についていくつかの考えられる説明を試みた。栄養が枯渇した細胞では、Sir2を欠失させると日齢依存性DNA変異の蓄積速度が低下した。Sir2を欠乏する細胞のストレス抵抗性は、酸化ストレスや熱ショックに曝露したときにも増加した。また、Sir2を欠失させると、アルコール脱水素酵素2の含有量とその活性も増加した。著者らは、アルコール(酵母の発酵時に産生されて分泌されるが、栄養が枯渇したときには炭素源としても利用される)はその代謝状態を反映する重要な酵母細胞へのシグナルであり、その枯渇が世代での老化を延長するプログラムをもたらすのではないかと提案している。著者ら、ならびに本論文の論評を書いたKennedyは、これらの研究成果は哺乳類の老化を理解する上でも有意義であるとし、代謝を調節したり代謝に応答したりする調節経路がどのように収束して寿命を調節するのかについて論じている。

P. Fabrizio, C. Gattazzo, L. Battistella, M. Wei, C. Cheng, K. McGrew, V. D. Longo, Sir2 blocks extreme life-span extension. Cell 123, 655-667 (2005). [PubMed]
B. K. Kennedy, The enigmatic role of Sir2 in aging. Cell 123, 548-550 (2005). [PubMed]

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