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転写 過剰なグルコースが有毒なわけ

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Why Excess Glucose Is Toxic

Editor's Choice

Sci. STKE,Vol. 2006, Issue 320, pp. tw40, 31 January 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3202006tw40]

要約 : 高濃度のグルコースは有毒で、糖尿病性網膜症などの疾患の一因となる。グルコース上昇は解糖系の流れを増加させ、高反応性のジカルボニル化合物であるメチルグリオキサールの産生の増加をもたらす。細胞はこの有毒な分解産物を、グリオキシラーゼI(GLO1)やグリオキシラーゼII、グルタチオンによる乳酸への酵素的変換により除去する。一方、糖尿病などの病理学的状況や酸化ストレス条件のもとでは、メチルグリオキサールは蓄積してDNAまたはタンパク質のアルギニン、リジン、システイン残基と反応する場合がある。Yaoらは、網膜ミュラー細胞(rMC-1)をグルコース上昇に曝露すると、メチルグリオキサール濃度が上昇し、アンジオポイエチン-2(Ang-2)遺伝子の発現が活性化することを示している。これらの効果はいずれも、細胞がGLO1やミトコンドリア脱共役タンパク質UCP-1、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)を過剰発現する場合には阻止された。プロモーター解析により、Ang-2プロモーターのSp1部位におけるグルコース応答エレメントが同定され、クロマチン免疫沈降実験により、Sp1の結合は高グルコース条件下で亢進するのに対してSp3の結合は減少することが解明されたことから、グルコースはこれら2つの転写制御因子の切り替えを誘導することが示唆された。GLO1やUCP-1、MnSODが過剰発現すると、このグルコースにより促進される切り替えは阻止された。Sp3は、コリプレッサーであるmSin3Aと同時に免疫沈降した。グルコース上昇は、mSin3Aのメチルグリオキサールによる修飾を増加させ、mSin3AおよびSp3とO-結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)トランスフェラーゼ(OGT)との会合を増加させ、その結果Sp3はO-GlcNAcによる修飾を受けた。UDP-GlcNAc形成の律速酵素に対するアンチセンスRNAまたはO-GlcNAcを除去する酵素の過剰発現によりタンパク質のO-GlcNAc修飾を阻害したところ、Ang-2プロモーターにおけるSp1およびSp3-mSin3Aの切り替えが阻止された。血管新生シグナルのアンバランス(十分な血管内皮増殖因子なしにAng-2が上昇した場合など)は内皮細胞の死や退化を誘導するため、これらの結果は高グルコース濃度に関連する糖尿病性網膜症のメカニズムを提供する。また、以上の結果は、メチルグリオキサールの転写作用を介したグルコースの加齢および癌における役割を考える上でも重要である(Ramasamyら参照)。

D. Yao, T. Taguchi, T. Matsumura, R. Pestell, D. Edelstein, I. Giardino, G. Suske, N. Ahmed, P. J. Thornalley, V. P. Sarthy, H.-P. Hammes, M. Brownlee, Methylglyoxal modification of mSin3A links glycolysis to angiopoietin-2 transcription. Cell 124, 275-286 (2006). [PubMed]
R. Ramasamy, S. F. Yan, A. M. Schmidt, Methylglyoxal comes of AGE. Cell 124, 258-260 (2006). [PubMed]

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