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造血 カルシウムでリラックスする

HEMATOPOIESIS:
Feeling at Home with Calcium

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 321, pp. tw47, 7 February 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3212006tw47]

要約 : 造血幹細胞(HSC)移植は、重症の再生不良性貧血や一部の癌、いくつかの免疫系の遺伝性疾患を始めとする、生命を脅かす多様な病気の治療に用いられる。HSCは血液に注入すると骨髄へと移動する(成人では骨髄で造血が行われる)が、これらの細胞がこの場所で樹立されるメカニズムは明らかになっていない。HSCは細胞外カルシウム濃度([Ca2+]o)が40mMにも達する骨内膜の近傍に存在することに着目し、Adamsらは、HSCが[Ca2+]oに対して感受性を示す可能性を調べた。著者らは、フローサイトメトリーおよび逆転写PCR(RT-PCR)を用いて、幹細胞を豊富に含む骨髄細胞は、[Ca2+]oを検出するGタンパク質共役受容体であるCaRを発現することを示した。CaRを欠損する3日齢のマウスでは、骨髄に含まれる細胞数が減少していた。また、表現型解析および機能解析により、未分化の造血細胞はCaR-/-マウスの血液および脾臓に存在するが、それらの数は骨髄で減少することが示された。胎児の造血は肝臓で行なわれ、CaR-/-マウス胎児の肝臓に由来するHSCは野生型マウスと同程度であった。さらに、CaR-/-マウス由来の未分化の胎児肝造血細胞は、野生型マウスの骨髄へと向かい、間質細胞由来因子-αの勾配に沿って移動した。しかし、野生型マウス由来の細胞と比べると、コラーゲンIへの接着が十分でないため骨内膜の間隙に留まることができず、野生型幹細胞と競合させると生着も十分でなかった。以上より、著者らは、CaRによるカルシウム感知は骨髄におけるHSCの生着において重要な役割を担うとの結論に達した。

G. B. Adams, K. T. Chabner, I. R. Alley, D. P. Olson, Z. M. Szczepiorkowski, M. C. Poznansky, C. H. Kos, M. R. Pollak, E. M. Brown, D. T. Scadden, Stem cell engraftment at the endosteal niche is specified by the calcium-sensing receptor. Nature 439, 599-603 (2006). [PubMed]

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