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細胞生物学 TGF-βの治癒効果

CELL BIOLOGY:
The Healing Effects of TGF-β

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 329, pp. tw112, 4 April 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3292006tw112]

要約 : 創傷治癒が適切に行なわれるためには、複数の細胞種の順序正しい遊走が必要である。ヒトでは、表皮ケラチノサイト(HK)は創傷を横切って移動し、新しい連続的な上皮層を形成する。そして皮膚線維芽細胞(DF)やヒト皮膚微小血管内皮細胞(HDMEC)のような皮膚細胞が新たにやって来て、細胞外マトリックスを修復して新しい血管の形成を助ける。ところで、これらの細胞はいつ、どこで働くべきかをどのようにして知るのであろうか。Bandyopadhyayらの新しい研究によれば、1つの重要な要因は、創傷部位の細胞がまず血漿(血球を含まない血液の液体成分)に曝露され、その後血清(凝血後に残る血球を含まない液体成分)に曝露された後、再び血漿に曝露されることである。著者らは、金コロイドで被覆した細胞外マトリックスの表面に細胞が可視軌道を残すアッセイやin vitro創傷治癒アッセイにおいて、さまざまな細胞種に対する血清および血漿の効果を観察した。血漿は皮膚細胞(DFおよびHDMEC)の遊走を活性化したが、表皮HKに対する影響はほとんどなかった。反対に、血清はHKの遊走を活性化したが、DFおよびHDMECに対する影響はほとんどなかった。著者らは、トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)が血清には比較的豊富に含まれるが、血漿にはほとんど含まれないか検出不可能であることから、この増殖因子がこれらの異なる応答を説明する要因ではないかと考えた。まるで血漿に応答するかのように、細胞はTFG-β3アイソフォームを抗体により除去した血清に応答した。また、著者らは、II型TGF-β受容体は皮膚細胞に豊富に含まれるが、表皮細胞にはそれほど多く含まれないことを突き止めた。HKにTGF-βRIIを外来性に発現させると、血清に応答する細胞の運動は亢進するのではなく低下した。低分子干渉RNAを用いて皮膚細胞におけるTGF-βRIIの発現を低下させたところ、血漿および血清に対する遊走性応答が逆転した。著者らは、創傷部位における細胞が血漿、血清、再び血漿の順序で曝露されると、さまざまな細胞種の移動が協調して起こり、組織の再構築および治癒が可能になるのではないかと提案している。治癒できない創傷は一部の疾患や高齢者で問題であり、正常な治癒過程の組織化についての理解を深めることで、増殖因子治療をより有効に利用でき、病院での不応性創傷の治癒を向上できるかもしれない。

B. Bandyopadhyay, J. Fan, S. Guan, Y. Li, M. Chen, D. T. Woodley, W. Li, A "traffic control" role for TGFs3: Orchestrating dermal and epidermal cell motility during wound healing. J. Cell Biol. 172, 1093-1105 (2006). [Abstract] [Full Text]

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