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栄養センシング プロモーター上のTOR

NUTRIENT SENSING:
TOR on the Promoter

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 351, pp. tw302, 5 September 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3512006tw302]

要約 : ラパマイシン標的タンパク質(TOR)は、栄養状態に対する細胞応答の主要制御因子であるキナーゼである。ラパマイシンの存在下や栄養欠乏状態の条件下では、TORのキナーゼ活性が阻害され、それによりタンパク質合成やリボソーム生合成は減少し、遺伝子発現は変化する。酵母には2つのTORコード遺伝子Tor1およびTor2があり、コードされるタンパク質はTORC1およびTORC2と呼ばれる2つの複合体を形成する。Liらは、Tor1に特異的な抗体を作製し、栄養欠乏やラパマイシン処理は核外へのTor1の排出を促進することを示した(富栄養状態では、TORC1は細胞質と核の両方に存在する)。再分布には、Tor1における完全な核外輸送シグナル(NES)が必要であり、ラパマイシン促進型の排出は、核外輸送タンパク質であるCrm変異体を発現する酵母では阻害された。すべての条件で、2つの核局在化シグナル(NLS)の2つ目の変異は、Tor1の核内輸送を阻害し、核内蓄積は輸送タンパク質Srp1が変異した酵母では阻害された。複数の遺伝子がTORC1依存性の発現または抑制を示す。核外輸送または核内輸送のいずれかを阻害するTor1変異体を発現する酵母は、TORC1が介するRNAポリメラーゼII転写遺伝子の制御を引き続き示したことから、TORC1の核内活性は、これらの遺伝子の制御には必要でなく、この応答には細胞質における複合体のキナーゼ活性の制御が必要であると考えられる。一方、リボソームRNA合成(具体的には、35S rRNAをコードする遺伝子)の制御は、NES変異体を発現する細胞では失われていた。クロマチン免疫沈降実験により、Tor1とTORC1複合体の他の成分は、富栄養状態で35S rDNAプロモーターに結合するが、TORC2複合体の成分は結合せず、ラパマイシンはTor1の解離を引き起こすことが確認された。Tor1とプロモーターとの結合には、ヘリックスターンヘリックスモチーフが必要であったが、ロイシンジッパーモチーフは必要でなかった。以上より、TORC1複合体は、核においてRNAポリメラーゼI依存性の遺伝子発現を制御する機能と細胞質においてRNAポリメラーゼII依存性の遺伝子発現を制御する機能を持つようである。

H. Li, C. K. Tsang, M. Watkins, P. G. Bertram, X. F. S. Zheng, Nutrient regulates Tor1 nuclear localization and association with rDNA promoter. Nature 442, 1058-1061 (2006). [PubMed]

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