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脂質、海産物を多く含む食事が健康なわけ

Lipids Why a Diet Rich in Seafood Is Healthy

Editor's Choice

Sci. STKE, 17 October 2006 Vol. 2006, Issue 357, p. tw353
[DOI: 10.1126/stke.3572006tw353]

Nancy R. Gough

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 魚介類に含まれるオメガ‐3脂肪酸は、健康に良い効果があることが知られている。その抗炎症作用のメカニズムは、プロスタグランジンの生合成における律速酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)の酵素活性の競合的阻害である。Massaroらは、内皮細胞をオメガ‐3脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)に長期間曝露し、この脂質が細胞膜に取り込まれるようにすると、炎症誘発性シグナルに応じて、核内因子κB(NF-κB)の活性化とその後のCOX-2発現およびプロスタグランジン産生が阻害されることを報告している。ヒト伏在静脈内皮細胞(HSVEC)をDHAで最大48時間処理したところ、その後のインターロイキン1α(IL-1α)またはホルボールエステルへの細胞の曝露に応じたCOX活性化が阻害された。ウエスタンブロット解析およびノーザン解析により、DHA処理はIL-1αまたはホルボールエステルによるCOX-2(誘導型アイソフォーム)の発現誘導ならびに含有量を、COX-1(恒常活性型アイソフォーム)の含有量に影響せずに阻害することが示された。レポーター遺伝子解析により、DHAを介するCOX-2の阻害にはCOX-2プロモーターのNF-κB結合部位が必要であり、DHA前処理はIL-1αにより誘導されるNF-κBのDNA結合(電気泳動移動度シフト解析により測定)および核移行(細胞分画後、ウエスタンブロット法により測定)を減少させることが実証された。DHA処理は、NF-κB活性化を誘導するIL-1αにより活性化される経路のいくつかのステップを阻害した。DHAで処理した細胞では、その後のIL-1αに対する応答により、(i)細胞外シグナル制御キナーゼ1、2(ERK1/2)活性化は減少するが、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(p38 MAPK)の活性化は変化しない、(ii)NADPHオキシダーゼのp47phoxサブユニットの膜会合の阻害を介した活性酸素種の産生の減少、(iii)プロテインキナーゼCε(PKCε)の膜会合は減少する(PKCεやPKCξは減少しない)ことが示された。以上より、オメガ‐3脂肪酸の長期的効果は、膜脂質成分の変化により、炎症刺激に対するシグナル伝達が減少するためのようである。

M. Massaro, A. Habib, L. Lubrano, S. Del Turco, G. Lazzerini, T. Bourcier, B. B. Weksler, R. De Caterina, The omega-3 fatty acid docosahexaenoate attenuates endothelial cyclooxygenase-2 induction through both NADP(H) oxidase and PKC inhibition. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103, 15184-15189 (2006). [Abstract] [Full Text]

N. R. Gough, Why a Diet Rich in Seafood Is Healthy. Sci. STKE 2006, tw353 (2006).

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