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骨粗しょう症に共鳴するうつ病

Depression Sympathetic to Osteoporosis

Editor's Choice

Sci. STKE,14 November 2006 Vol. 2006, Issue 361, p. tw384
[DOI: 10.1126/stke.3612006tw384]

Elizabeth M. Adler

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 大うつ病は、骨ミネラル密度の低下(骨粗しょう症の指標)と骨粗しょう症性骨折リスクの増加に関連する。ところが、うつ病と骨粗しょう症との明確な関係は分かっていないため、Yirmiyaらは、げっ歯類うつ病モデルである慢性軽度ストレス(CMS)のマウス骨格に対する影響を調べた。CMSを受けたマウスでは、ショ糖に対する嗜好性の低下(ヒト無快感症に類似する)や社会的探索の減少などの行動的影響と並行して、骨量の減少と骨形成速度の低下が起こった。三環系抗うつ薬であるイミプラミンを用いた治療は、CMSの行動的影響と骨量減少の両方を軽減した。また、行動的にイミプラミンに応答しなかったマウスには、骨量減少の軽減もみられなかった。体重、自発運動、血清テストステロンは、CMSの影響を受けなかった。血清コルチコステロンは、CMSに曝露したマウスにおいて高かった。ところが、副腎摘出マウスは、CMSに対する行動的応答や骨量減少のいずれも示さず、コルチコステロイドがうつ病誘導性骨量減少を仲介する役割の評価は困難であった。骨梁における交感神経由来ノルエピネフリンの含有量は、CMSマウスにおいて増加し、CMSに対する行動的応答に影響しないβアドレナリン作動性受容体アンタゴニストのプロパノロールを用いた治療は、CMS誘導性骨量減少と骨形成の阻害を著しく軽減した。以上より、著者らは、うつ病はノルエピネフリンの交感神経からの放出を介して骨量低下をもたらし、両方のリスクをもつ人では、抗うつ薬をうつ病だけでなく骨粗しょう症の治療にも用いることができるという結論に達した。

R. Yirmiya, I. Goshen, A. Bajayo, T. Kreisel, S. Feldman, J. Tam, V. Trembovler, V. Csernus, E. Shohami, I. Bab, Depression induces bone loss through stimulation of the sympathetic nervous system. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103, 16876-16881 (2006). [Abstract] [Full Text]

E. M. Adler, Sympathetic to Osteoporosis. Sci. STKE 2006, tw384 (2006).

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