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代謝:核内のグルコースを感知する

Metabolism Sensing Nuclear Glucose

Editor's Choice

Sci. STKE, 16 January 2007 Vol. 2007, Issue 369, p. tw20
[DOI:10.1126/stke.3692007tw20]

Elizabeth M. Adler

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 肝臓X受容体(LXR-αおよびβ)は、グルコースと脂質代謝の両方に関与すると考えられている核内転写因子である。オキシステロールリガンドによるこれらの活性化は、アテローム性動脈硬化症と抗糖尿病効果の両方の低下を引き起こす。合成LXRリガンドは、げっ歯類モデルにおいて肝糖新生を減少させ脂質生成を増大させるが、通常のげっ歯類の食餌にはコレステロールが含まれていないので、Mitroらは他のリガンドを探すことにした。Mitroらは、グルコースとグルコース誘導体は、LXRリガンド結合ドメイン(LBD)をGal4 DNA結合ドメインと転写活性化LXR-RXR(レチノイドX受容体)標的に融合させたコンストラクトを発現するヒトHepG2細胞において、Gal4応答性遺伝子レポーターの転写活性化を促進することを突き止めた。無細胞コアクチベーター会合アッセイとシンチレーション近接アッセイにより、グルコースとグルコース-6-リン酸がLXR LBDに結合する直接のLXRアゴニストであることが示された。さらに、グルコースはLXR-αをタンパク分解による攻撃から保護し、LXR-βの解離温度を上昇させた。グルコースは、既知リガンドと同様のHepG2細胞におけるLXR標的遺伝子の転写に影響を及ぼして、脂肪酸合成とコレステロールホメオスタシスに関与する遺伝子の発現を亢進させ、糖新生遺伝子の発現を阻害した。さらに、LXRリガンドの効果も増強した。同様に、グルコースまたはスクロースの摂取により、絶食マウス(インスリン欠乏のマウスでさえ)の肝臓において、LXR標的遺伝子の発現が亢進した。以上より、グルコース自体はLXRのリガンドとして働くようであり、著者らは、LXRが糖と脂質代謝を協調させる「転写スイッチ」として働くのではないかと提案している。

N. Mitro, P. A. Mak, L. Vargas, C. Godio, E. Hampton, V. Molteni, A. Kreusch, E. Saez, The nuclear receptor LXR is a glucose sensor. Nature 445, 219-223 (2007). [PubMed]

E. M. Adler, Sensing Nuclear Glucose. Sci. STKE 2007, tw20 (2007).

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