• ホーム
  • 神経科学、VEGFを用いて元気づける

神経科学、VEGFを用いて元気づける

Neuroscience Cheering Up with VEGF

Editor's Choice

Sci. STKE, 20 March 2007 Vol. 2007, Issue 378, p. tw91
[DOI: 10.1126/stke.3782007tw91]

Elizabeth M. Adler

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 抗うつ薬作用の分子メカニズムは明らかでないが、ひとつの仮説により、海馬における増殖因子のシグナル伝達と成人の神経発生の促進が、このような効果に関連する可能性が示唆される。Warner-SchmidtとDumanは、異なる種類の抗うつ薬が海馬における神経栄養性因子であり血管新生促進性因子でもあるVEGF(血管内皮増殖因子)の発現に及ぼす効果について検討した。この因子は、同研究グループが、過去に電気けいれん(ECS)療法により増強されることを示していたものである。VEGF mRNAの含有量は、海馬ホモジネートにおけるVEGFの含有量と同様に、フルオキセチン(セロトニン再取り込み阻害薬)またはデシプラミン(ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)を14日間投与したラットの海馬顆粒細胞層において増大した。VEGF受容体Flk-1の薬理学的阻害は、ECSまたはフルオキセチンやデシプラミンへの慢性曝露により生成される海馬顆粒細胞下帯(SGZ)における細胞増殖の増加を阻害したが、VEGFアイソフォームの脳室内投与はSGZの細胞増殖を促進した。さらに、Flk-1の薬理学的阻害は、慢性および亜慢性の抗うつ薬治療モデルにおけるデシプラミンのラット行動応答に及ぼす影響を阻害したが、VEGFは抗うつ薬様の効果を示した。以上より、著者らは、いくつかの種類の抗うつ薬の行動的影響とそれらがSGZ細胞増殖に及ぼす影響の両方を仲介するうえで、VEGFが重要な役割を担うとの結論に達している。抗うつ薬が、海馬神経発生と同様に、海馬内皮細胞の増殖を促進することに着目し、著者らは、血管異常と関連する特定の種類のうつ病の治療において、このことが関与する可能性があると推測した。

J. L. Warner-Schmidt, R. S. Duman, VEGF is an essential mediator of the neurogenic and behavioral actions of antidepressants. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 104, 4647-4652 (2007). [Abstract] [Full Text]

E. M. Adler, Cheering Up with VEGF. Sci. STKE 2007, tw91 (2007).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ