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肥満:レチンアルデヒドで体重を管理する

Obesity Watching Your Weight with Retinaldehyde?

Editor's Choice

Sci. STKE, 12 June 2007 Vol. 2007, Issue 390, p. tw202
[DOI: 10.1126/stke.3902007tw202]

Elizabeth M. Adler

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 脂溶性ビタミンAの主要な形態であるレチノールは、さまざまな代謝産物に変換される。主要な代謝産物であるレチノイン酸(RA)は、レチノイン酸受容体とレチノイドX受容体(RARとRXR)を介して作用し、標的遺伝子の転写を調節する。代謝中間体であるレチンアルデヒドに関しては、網膜外での直接的な役割は同定されていない(Desvergne参照)。レチンアルデヒドオキシムへの還元を用いて不安定レチンアルデヒドを測定することにより、Ziouzenkovaらはげっ歯類の脂肪に含まれるレチンアルデヒドを同定し、肥満マウスの脂肪は非肥満マウスの脂肪よりもレチンアルデヒドの濃度が低いことを突き止めた。レチンアルデヒドは、3T3-L1マウス前脂肪細胞において、脂肪生成遺伝子をコードするmRNAの発現を阻害した。その効果は、レチノイン酸とは明確に異なっていた。脂肪生成の初期の段階で加えた場合、レチンアルデヒドとレチノイン酸の9-シスおよび全トランス異性体すべてが、アディポネクチン(Adipoq)をコードする遺伝子の発現を阻害したのに対して、この過程の後期においては、レチンアルデヒドのみがAdipoqを阻害した。レチンアルデヒドは、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体‐γ(PPAR-γ:RXRとヘテロ二量体を形成する)の活性化およびPPAR応答エレメントを含有する遺伝子レポーターのアゴニスト依存性活性化に応答して脂肪生成を阻害した。しかしながら、RXR-αおよびRXR-βに対するsiRNAを用いた実験により、レチンアルデヒドによる脂肪生成の阻害には、RXR依存性およびRXR非依存性の効果がともに関与することが示唆された。レチンアルデヒドをRAへと異化代謝するレチンアルデヒドデヒドロゲナーゼ‐1(Raldh1)を欠失するマウスの脂肪細胞は、野生型マウスの細胞よりも小さく、Raldh1-/-マウスの線維芽細胞のin vitro脂肪生成は低下した。興味深いことに、Raldh1-/-マウスは野生型マウスよりも高脂肪食に応じた体重増加が少なく、体脂肪の減少および代謝の増加を示し、インスリン抵抗性を発症しにくかった。さらに、レチンアルデヒド(またはRaldh1阻害剤)は、通常食で肥満になったトランスジェニックマウスにおいて、体脂肪を減少させ、グルコース耐性を増加させた。以上より、著者らは、レチンアルデヒドは脂肪生成の阻害および食事に対する代謝応答の仲介において、特徴的な役割を担うとの結論に達している。

O. Ziouzenkova, G. Orasanu, M. Sharlach, T. E. Akiyama, J. P. Berger, J. Viereck, J. A. Hamilton, G. Tang, G. G. Dolnikowski, S. Vogel, G. Duester, J. Plutzky, Retinaldehyde represses adipogenesis and diet-induced obesity. Nat. Med. 13, 695-702 (2007). [PubMed]

B. Desvergne, Retinaldehyde: More than meets the eye. Nat. Med. 13, 671-673 (2007). [PubMed]

E. M. Adler, Watching Your Weight with Retinaldehyde? Sci. STKE 2007, tw202 (2007).

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