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生理学
骨は膵臓にこっちに来いと呼びかける

Physiology
Bones Calling Pancreas, Come In Please

Editor's Choice

Sci. STKE, 14 August 2007 Vol. 2007, Issue 399, p. tw288
[DOI: 10.1126/stke.3992007tw288]

Nancy R. Gough

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 脂肪細胞は骨のリモデリングを調節するホルモンを放出することがこれまでにわかっている。恒常性の概念から、骨は代謝を調節してフィードバック系を確立する組織にシグナルを送り戻すことができるはずであると考えられる。Leeらはこのような内分泌連絡について探索し、骨芽細胞(骨沈着に関与する細胞)で特異的に発現する遺伝子をノックアウトして代謝を変化させたマウスをスクリーニングした。この手法を用いて、この研究者らは骨芽細胞とセルトリ細胞のみに存在するOST-PTPと呼ばれるプロテインチロシンホスファターゼをコードするEsp遺伝子を同定した(ノックアウトマウス、あるいは骨芽細胞のみに存在する遺伝子を選択的に破壊したマウスを解析したところ同じ表現型を示した。このような表現型はまとめてEsp-/-と呼ばれる)。Esp-/-マウスでは、出生時死亡率、膵β細胞重量、インスリンとアディポネクチンの循環濃度が増大し、血中グルコース濃度が低下し、グルコース耐性が増大した。アディポネクチンは脂肪細胞によって放出され、インスリン感受性を亢進させる。さらに、Esp-/-マウスは高脂肪食または過食(視床下部腹内側核の破壊により誘導される)により引き起こされる肥満とグルコース不耐性に抵抗を示した。Esp-/-マウスが骨芽細胞により分泌されるタンパク質オステオカルシンをコードする遺伝子に関してヘテロ接合体であると、このマウスの代謝変化が回復したことから、OST-PTPはオステオカルシンを調節することが示唆された。ところが、Esp-/-マウスの循環オステオカルシン濃度は正常であった。したがって、OST-PTPはオステオカルシンの生理活性に影響を与える。オステオカルシンは、グルタミン酸残基のγ-カルボキシ化による翻訳後修飾を受ける。Esp-/-マウスにおいて、循環しているカルボキシ化オステオカルシンに対する非カルボキシ化オステオカルシンの存在量は増大した。野生型骨芽細胞、Esp-/-骨芽細胞、あるいはワルファリン処理骨芽細胞(ワルファリンはγ-カルボキシ化を阻害する)と、脂肪細胞あるいは膵b細胞の共培養実験によって、非カルボキシ化オステオカルシンは生理活性型であり、Esp-/-骨芽細胞による非カルボキシ化型の放出が増大するとの仮説が裏づけられた。これらの結果は重要な臨床的意義を持つ(Semenkovich&Teitelbaum参照)。第1に、この研究者らは、肥満と糖尿病を治療するための別の標的(オステオカルシン、OST-PTP、オステオカルシンγ-カルボキシル化に関与する酵素)を指摘している。第2に、ワルファリンは臨床的に血栓の治療に用いられる。このような患者における代謝への影響については検討すべきである。第3に、骨粗鬆症の予防に用いる治療法は、骨リモデリングを阻害し、骨格とエネルギー代謝を結び付けるこの恒常性メカニズムを変化させる可能性がある。最後に、この研究は、依存的および非依存的な影響として、グルココルチコイド治療が代謝や骨リモデリングに与える影響を理解するための機構的枠組みを提供するかもしれない。

N. K. Lee, H. Sowa, E. Hinoi, M. Ferron, J. D. Ahn, C. Confavreux, R. Dacquin, P. J. Mee, M. D. McKee, D. Y. Jung, Z. Zhang, J. K. Kim, F. Mauvais-Jarvis, P. Ducy, G. Karsenty, Endocrine regulation of energy metabolism by the skeleton. Cell 130, 456-469 (2007). [Online Journal]
C. F. Semenkovich, S. L. Teitelbaum, Bone weighs in on obesity. Cell 130, 409-411 (2007). [Online Journal]

N. R. Gough, Bones Calling Pancreas, Come In Please. Sci. STKE 2007, tw288 (2007).

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