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VHL:リガーゼとキナーゼのアダプター

Cancer VHL: Ligase and Kinase Adaptor

Editor's Choice

Sci. STKE, 23 October 2007 Vol. 2007, Issue 409, p. tw381
[DOI: 10.1126/stke.4092007tw381]

Nancy R. Gough

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 転写因子核因子κB(NF-κB)の活性上昇は、腫瘍壊死因子α(TNF-α)などのサイトカインにより引き起こされるアポトーシスを減少させることにより腫瘍形成に寄与する。一般的な腎臓がんである腎明細胞がんは、von Hippel Lindau(VHL)をコードする遺伝子の変異または発現低下としばしば関連がある。VHLは、低酸素応答性転写因子HIF-1αのユビキチン化を仲介するE3ユビキチンリガーゼ基質認識サブユニットとしての役割がよく知られているタンパク質である。しかし、いくつかの証拠から、これらの腫瘍におけるVHLの役割は、HIF-1αの調節とは関係がないことが示唆されている。また、VHL活性を欠損する細胞は、NF-κBシグナル伝達の亢進を示すことが多い。Yangらは、VHLと相互作用するタンパク質をアフィニティー精製し、NF-κBの活性化に関与するアダプタータンパク質CARD9を同定した。CARD9とVHLとの相互作用は、複数のアッセイ(組換えタンパク質によるin vitroアッセイ、トランスフェクト細胞を用いたアッセイや内在性タンパク質を用いたアッセイ)により確認された。CARD9は、電気泳動により解析すると必ずダブレットとして表れ、上のバンドはVHL欠損細胞から単離したCARD9の場合には存在せず、サンプルをホスファターゼで処理すると両分子型は単一のより速い泳動度を示す型へと変化した。VHLはカゼインキナーゼ2(CK2)と相互作用し、CARD9はC末端領域に2つのコンセンサスなCK2リン酸化部位を持つ。CARD9は、in vitroにおいてCK2の基質であった。VHLの過剰発現はCK2とCARD9との相互作用を増大させ、精製した脱リン酸化CARD9は、VHL含有細胞抽出液とインキュベーションするとリン酸化された。CK2活性の阻害(siRNAまたは薬剤による)によってCARD9のリン酸化は減少した。C末端ドメインを欠損するか、変異したリン酸化部位を有するCARD9変異体を発現する細胞、もしくはCK2を薬理学的に阻害した細胞はNF-κB活性の上昇を示したことから、CK2によるCARD9のリン酸化は、NF-κBを阻害するCARD9の能力を阻害するようであった。VHL-/-腎がん細胞において、siRNAによるCARD9のノックダウンはNF-κB活性を低下させ、TNF-αに応答するアポトーシスを増加させ、マウス異種移植解析において腫瘍増殖を低下させた。このように、VHLはNF-κB活性を調節するためのキナーゼアダプターとして機能するという、がんと関連する二番目の重要な機能を持つようである。

H. Yang, Y. A. Minamishima, Q. Yan, S. Schlisio, B. L. Ebert, X. Zhang, L. Zhang, W. Y. Kim, A. F. Olumi, W. G. Kaelin Jr., pVHL acts as an adaptor to promote the inhibitor phosphorylation of the NF-κB agonist Card9 by CK2. Mol. Cell 28, 15-27 (2007). [PubMed]

N. R. Gough, VHL: Ligase and Kinase Adaptor. Sci. STKE 2007, tw381 (2007).

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