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コンピューター生物学 
経路の帯域幅の決定

Computational Biology
etermining Pathway Bandwidth

Editor's Choice

Sci. Signal., 27 May 2008
Vol. 1, Issue 21, p. ec193
[DOI: 10.1126/stke.121ec193]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : シグナル伝達経路は、細胞および生物が環境変化に対応するのを可能にする。しかし、シグナル伝達経路の活性化や不活性化がいかに速く可能かということが、その経路の帯域幅(細胞が刺激の変化を忠実に再現できる最大周波数)を決定する。Hersenらは、培地に周期的変化を引き起こすマイクロ流体デバイスを開発し、それを急速かつ周期的に浸透圧モル濃度を増大させるために用い、その一方で蛍光レポーターを用いて出芽酵母におけるHOG(high-osmolarity glycerol)経路の活性化をモニターした。HOG経路は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)カスケードで構成され、二成分制御系リン酸仲介因子(Sln1経路:Sln1→Ssk1→MAPKKKのSsk2およびSsk22→MAPKのPbs2→MAPKのHog1)または酵素センサー系(Sho1経路:Sho1→MAPKKKのSte11→Pbs2→Hog1)のいずれかにより活性化が可能である。著者らは、緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ付きHog1の核移行またはGpd1-GFP(Hog1標的遺伝子によりコードされる)の産生をモニターし、経路の0.0046 Hzの帯域幅を計側した。浸透圧モル濃度が経路の帯域幅よりも低い周波数で変化した場合、Hog1-GFPの移行およびGpd1-GFPの産生は入力刺激に同期して増減した。浸透圧モル濃度が経路の帯域幅よりも速く変化した場合、経路は入力を統合し、Hog1-GFPは変動することなく核に蓄積してプラトーに達した。浸透圧モル濃度の変化の周波数が経路の帯域幅を超える場合には、Gpd1-GFPも変動することなく蓄積してプラトーに達した。この挙動は低域周波数通過フィルターとして機能する経路と一致する。細胞膨化に対して計測した帯域幅は、経路の帯域幅よりも小さく、このことは細胞の形状の機械的変化は制限要因でないことを示唆している。その代わりに、経路の帯域幅は、HOG応答を仲介する生化学的反応の活性化および不活性化速度により制限された。Sln1経路の変異体の帯域幅のみが野生型細胞の経路の帯域幅よりも小さかった(Sho1経路ではそうでなかった)。よって、HOG MAPKカスケードへのこの入力が、経路が応答可能な周波数を設定する。さらに、Sln1経路のみが経路の帯域幅を超える高周波数の刺激の組み入れに必要とされた。野生型細胞、またはSho1経路またはSln1経路のどちらかを不活性化させる変異を含む細胞におけるHog1の移行をモニターすることによって得られた経路の不活性化の計測速度(0.0041 Hz)が経路の帯域幅と一致したことは、HOGシグナル伝達の不活性化、つまりPbs2の脱リン酸化またはその下流が経路の帯域幅を決定することを示唆している。

P. Hersen, M. N. McClean, L. Mahadevan, S. Ramanathan, Signal processing by the HOG MAP kinase pathway. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105, 7165-7170 (2008). [Abstract] [Full Text]

N. R. Gough, Determining Pathway Bandwidth. Sci. Signal. 1, ec193 (2008).

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