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分子生物学 
アンチセンスはEPO受容体を増加させる

Molecular Biology
Antisense Boosts EPO Receptors

Editor's Choice

Sci. Signal., 3 June 2008 Vol. 1, Issue 22, p. ec203
[DOI: 10.1126/scisignal.122ec203]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : エリスロポエチン(EPO)シグナル伝達は、赤血球の分化に加え、器官形成にも寄与する。これまでに、出生後のイヌにおける片側肺の外科的切除(肺摘除術)後に、EPO受容体の存在量の増加が報告された。今回、Zhangらは、EPO-Rの存在量が、センスEPO-R転写物(sEPO-R)の転写機構に加えて、アンチセンス転写物(asEPO-R)自体ないしasEPO-R内にコードされるタンパク質によっても調節されるようであると報告している。EPO-Rのセンス転写物およびアンチセンス転写物はいずれも、正常なイヌの肺だけでなく、他のイヌ組織および数種のヒト組織において、ノーザンブロットで検出された。肺摘除術後に、sEPO-Rの存在量がやや増加した(対照より23%増加)のに対して、asEPO-Rの存在量は、EPO-Rの存在量(169%)と同様に、大きく増加した(対照より119%増加)。イヌ肺のasEPO-Rのクローニングおよび特性解析から、2つの推定上のオープンリーディングフレーム(ORF1およびORF2)が明らかになった。両方のEPO-R転写物およびEPO-Rタンパク質は、in situハイブリダイゼーションおよび免疫蛍光法によって同一の細気管支上皮細胞に検出されたが、サーファクタント関連タンパクAのアンチセンス転写物は検出されなかった。sEPO-RおよびasEPO-Rの共発現により、sEPO-Rのみをトランスフェクトした細胞と比較して、遺伝子導入ヒト胎児腎(HEK)293細胞が産生するEPO-Rの存在量が増加した。asEPO-Rの影響は、量依存的に増大した。ORF1の開始コドンを変異させても、コトランスフェクトした細胞では、EPO-Rの存在量が依然として増加していたことから、推定上のコードされているタンパク質は、asEPO-Rのもつ増強効果にとっては重要ではないことが示唆される。対照的に、ORF2に近い領域は、EPO-Rの調節においてより複雑な役割を果たすと考えられる。ORF2およびORF2開始部位の5’側の300塩基対を含む長いコンストラクトをsEPO-Rとコトランスフェクトすると、sEPO-R.のみをトランスフェクトした細胞と比較して、EPO-R産生が増大した。しかし、余分な300塩基対が含まれない場合は、EPO-Rの存在量は増加しなかった。ORF2領域の影響はさらに複雑であり、余分な300塩基対がないコンストラクトでは、ORF2の開始コドンを変異させると、EPO-R存在量の増加が回復した。著者らは、asEPO-Rにいくつかの調節エレメントがあると提唱する。すなわち、RNA自体は促進作用を持ち、ORF2にコードされるタンパク質は、EPO-R合成の負の調節因子である。したがって、ORF2の開始コドンが除去されると、アンチセンスRNAの正の作用が優勢になり、EPO-R産生が増大する。

Q. Zhang, J. Zhang, O. W. Moe, C. C. W. Hsia, Synergistic upregulation of erythropoietin receptor (EPO-R) expression by sense and antisense EPO-R transcripts in the canine lung. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105, 7612-7617 (2008). [Abstract] [Full Text]

N. R. Gough, Antisense Boosts EPO Receptors. Sci. Signal. 1, ec203 (2008).

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