• ホーム
  • サーカディアンリズム(概日リズム) 
    時間(CLOCK)との戦い

サーカディアンリズム(概日リズム) 時間(CLOCK)との戦い

Circadian Rhythms
Against the CLOCK

Editor's Choice

Sci. Signal., 29 July 2008
Vol. 1, Issue 30, p. ec270
[DOI: 10.1126/scisignal.130ec270]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 概日時計を制御するフィードバックループには、CLOCKとBMAL1というタンパク質が含まれる。これらは概日リズム遺伝子の調節配列に結合してその転写を促進する複合体を形成する。そのような2つの概日リズム遺伝子がPeriod (Per) とCryptochrome (Cry)であり、これらの遺伝子産物PER とCRYが蓄積してCLOCK-BMAL1の活性を阻害する。このようなフィードバックループは脳内で明暗サイクルと同調するが、摂食行動も何らかの働きをしているようである。CLOCKには最近、ヒストンタンパク質をアセチル化して遺伝子転写を促すという、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)としての特性が明らかにされている。しかし,CLOCKはBMAL1など非ヒストンタンパク質もアセチル化する。このほど2つの研究グループが、CLOCKに拮抗するヒストンデアセチラーゼ(HDAC)として、NAD+依存性タンパク質「SIRT1」を特定した。Asher らは、マウス胚性線維芽細胞でSIRT1の存在量が日周的に調節されていること、SIRT1は概日時計遺伝子の日周的発現に必須であること、およびSIRT1はCLOCK-BMAL1とPER2に日周的に結合することを発見した。SIRT1はPER2も脱アセチル化して、その分解を促進した。またNakahataらは、SIRT1の存在量ではなく、SIRT1のHDAC活性が日周的に制御されること、およびSirt1をノックアウトすることで概日時計遺伝子の日周的発現が変化することを発見した。SIRT1は、概日時計遺伝子Dbpのプロモータ部位でCLOCK-BMAL1とクロマチン複合体を形成し、そこでヒストンH3とBMAL1の周期的なアセチル化−脱アセチル化に寄与していた。BMAL1の脱アセチル化によってPER2の分解が起こった。BeldenとDunlapは総評として、この2件の研究の相違点ではなく類似点の方に注目している。SIRT1の活性はNAD+依存性であり代謝によって影響をうけることから、SIRT1は概日時計の代謝制御を可能にする「つなぎ目」的なものである可能性がある。

G. Asher, D. Gatfield, M. Stratmann, H. Reinke, C. Dibner, F. Kreppel, R. Mostoslavsky, F. W. Alt, U. Schibler, SIRT1 regulates circadian clock gene expression through PER2 deacetylation. Cell 134, 317-328 (2008). [Online Journal]
Y. Nakahata, M. Kaluzova, B. Grimaldi, S. Sahar, J. Hirayama, D. Chen, L. P. Guarente, P. Sassone-Corsi, The NAD+-dependent deacetylase SIRT1 modulates CLOCK-mediated chromatin remodeling and circadian control. Cell 134, 329-340 (2008). [Online Journal]
W. J. Belden, J. C. Dunlap, SIRT1 is a circadian deacetylase for core clock components. Cell 134, 212-214 (2008). [Online Journal]

J. F. Foley, Against the CLOCK. Sci. Signal. 1, ec270 (2008).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ