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    「思考の糧」として摂食を考える

代謝「思考の糧」として摂食を考える

Metabolism
Food for Thought

Editor's Choice

Sci. Signal., 19 August 2008
Vol. 1, Issue 33, p. ec293
[DOI: 10.1126/scisignal.133ec293]

L. Bryan Ray

Science, Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : グレリンは胃で産生されるホルモンであり、脳内ニューロン上のヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)共役型受容体を介して摂食を刺激する働きがある。Andrewsらは、海馬のいわゆるNPY/AgRPニューロン(ニューロペプチドY(NPY)およびアグーチ関連タンパク質(AgRP)という2つのタンパク質を発現することにちなんだ名称)に対するグレリンの作用を解析した。肝臓や脂肪組織などの他の組織では、グレリンは脱共役タンパク質2(UCP2)の発現を亢進させることによって代謝に影響する。UCP2は、ミトコンドリアの内膜に存在する陰イオン担体タンパク質スーパーファミリーのメンバーである。脱共役とは、ミトコンドリア膜を横切るプロトン漏出を意味しており、ミトコンドリア内でスーパーオキシドラジカルを産生する過程である呼吸鎖に沿った電子の流れを変化させることにより、膜を隔てる電気化学的勾配をアデノシン三リン酸(ATP)の生成を伴わずに解消する。著者らは、グレリンがNPY/AgRPニューロンでもUCP2の蓄積を増大させることを発見し、さらにUcp2 -/-マウスの標本を用いて研究することにより、グレリンに応答してニューロン内の呼吸を亢進させ、ニューロンを発火させるためにはUCP2が必要であることを示した。また、このUcp2 -/-マウスはグレリンに応答する摂食の低下も示した。さらに著者らは、グレリンは、アデノシン一リン酸(AMP)活性化キナーゼ(AMPK)を活性化して、長鎖脂肪酸の酸化を促進するカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼの活性を高めることを通して作用することを示した。長鎖脂肪酸の持続的代謝により活性酸素種(ROS)の産生が増加するが、グレリンはUCP2を介して作用しROSの蓄積を減少させるものと考えられる。ROS量を制限することによって、NPY/AgRPニューロンを発火させる入力信号を継続させることができ、NPY/AgRPニューロンからの出力信号も促進され、ひいては、摂食を亢進させることになる。

Z. B. Andrews, Z.-W. Liu, N. Wallingford, D. M. Erion, E. Borok, J. M. Friedman, M. H. Tschop, M. Shanabrough, G. Cline, G. I. Shulman, A. Coppola, X.-B. Gao, T. L. Horvath, S. Diano, UCP2 mediates ghrelin’s action on NPY/AgRP neurons by lowering free radicals. Nature 454, 846-851 (2008). [PubMed]

L. B. Ray, Food for Thought. Sci. Signal. 1, ec293 (2008).

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