肥大
GRK対HDAC

Hypertrophy
GRK Versus HDAC

Editor's Choice

Sci. Signal., 2 September 2008
Vol. 1, Issue 35, p. ec306
[DOI: 10.1126/scisignal.135ec306]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : Gタンパク質共役受容体(GPCR)キナーゼ(GRK)は、セリン/スレオニンキナーゼのファミリーであり、アゴニストに占有されたGPCRをリン酸化して脱感作する。2つのメンバーであるGRK2およびGRK5は、心臓に多く存在し、その存在量は心不全および他の心臓病態の際に増大する。GRK5は、核局在化配列(NLS)をもつ点でGRK2とは異なる。Martiniらは、心筋細胞にGRK5が過剰に存在するトランスジェニックマウス(TgGRK5)を用いて、心臓病態におけるGRK5の役割について検討した。著者らは、大動脈縮窄術(transverse aortic constriction:TAC)を施し、肥大応答を誘導した。肥大応答は、心臓重量の漸増とその後の心不全を特徴とする。TgGRK5マウスでは、対照マウスと比較して、TACの4週間後に肥大応答の亢進が認められた。免疫蛍光解析およびウェスタンブロット解析から、ストレスを与えていないTgGRK5マウスと比較して、TACにより核に局在化するGRK5の割合が増加することが示された。NLSを欠損した変異型GRK5を発現するトランスジェニックマウスでは、TACに対する肥大応答は対照群と変わらなかった。レポーターアッセイから、GRK5の核内蓄積は、肥大応答の誘導に重要な転写因子myocyte enhancer factor-2(MEF2)の活性亢進を伴うことが明らかになった。心筋細胞では、GRK5は、MEF2活性のリプレッサーであるヒストンデアセチラーゼ5(HDAC5)のタグ付加タンパクと免疫共沈降した。GRK5は、COS-7細胞中のタグ付加HDAC5をリン酸化し、その結果、HDAC5の核外輸送が起こった。TgGRK5マウスでは、TACにより、GRK5とHDAC5の会合が増加した。総合すると、これらのデータから、GRKは、GPCRシグナル伝達を阻害するという従来の役割に加えて、HDACキナーゼとして作用し、遺伝子発現を制御することが示唆される。

J. S. Martini, P. Raake, L. E. Vinge, B. DeGeorge Jr., J. K. Chuprun, D. M. Harris, E. Gao, A. D. Eckhart, J. A. Pitcher, W. J. Koch, Uncovering G protein-coupled receptor kinase-5 as a histone deacetylase kinase in the nucleus of cardiomyocytes. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105, 12457-12462 (2008). [Abstract] [Full Text]

J. F. Foley, GRK Versus HDAC. Sci. Signal. 1, ec306 (2008).

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