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神経科学 
別々の集団に向かうシナプスシグナル伝達?

Neuroscience
Synaptic Signaling to a Separate Population?

Editor's Choice

Sci. Signal., 7 October 2008
Vol. 1, Issue 40, p. ec344
[DOI: 10.1126/scisignal.140ec344]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 神経伝達物質の素量単位での自発的放出を介して生じるシナプス後膜電位のわずかな上昇は、シナプス伝達の根底にある機構の解明において重要な役割を果たしたが、自発的放出の生理学的重要性はいまだに不明である。Atasoyらは、グルタミン酸の自発的放出により、シナプス後膜のN-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)の集団が活性化されること、この活性化される受容体は誘発性放出によって活性化されるものとは異なることを示す証拠を提示している。著者らは、ラット海馬ニューロンの解離培養系、海馬切片、および孤立ニューロン培養内で形成されたオータプスシナプスにおいて、NMDARの頻度依存性開口チャネル阻害薬であるMK-801を用いてNMDARの活性化履歴について検討し、自発的放出と誘発性放出によって活性化されたNMDARのクロストークを探した。静止ニューロンにMK-801を投与すると、自発的放出によるNMDARを介する微小興奮性シナプス後電流(NMDA-mEPSC)が急速に遮断されたのに対して、誘発性放出に対するNMDARを介する応答(NMDA-eEPSC)はほとんど変化しなかった。一方、MK-801存在下で反復刺激を加えると、NMDA-eEPSCが減少したが、誘発性放出に依存する遮断は、その後のNMDA-mEPSCに比較的わずかな影響しか及ぼさなかった。蛍光イメージングにより、シナプス小胞の誘発性放出と自発的放出は同一のシナプスで発生する頻度が高いが、これら2種類の放出速度にはほとんど相関性がないことが示唆された。モデル化によって、中程度から大きなシナプス(面積>0.2µm2)において、2つのNMDAR集団の独立した活性化が起こりうることが示唆された。自発的放出と誘発性放出は、同一シナプス内でさえもそれぞれ異なるNMDAR集団を活性化する可能性があることを著者らは提唱しており、これら2種類の放出は異なるシナプス後応答を誘発できるという興味深い可能性が浮かび上がっている。

D. Atasoy, M. Ertunc, K. L. Moulder, J. Blackwell, C. Chung, J. Su, E. T. Kavalali, Spontaneous and evoked glutamate release activates two populations of NMDA receptors with limited overlap. J. Neurosci. 28, 10151-10166 (2008). [Abstract] [Full Text]

E. M. Adler, Synaptic Signaling to a Separate Population? Sci. Signal. 1, ec344 (2008).

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