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構造生物学 
それほど相同ではないのか?

Structural Biology
Not So Homologous?

Editor's Choice

Sci. Signal., 21 October 2008
Vol. 1, Issue 42, p. ec360
[DOI: 10.1126/scisignal.142ec360]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : ヘッジホッグ(Hh)タンパク質ファミリーメンバーを介するシグナル伝達は、ショウジョウバエ(Drosophila)から脊椎動物まで多岐にわたる生物の組織パターン形成および細胞増殖などの過程で重要である。ヒトの場合には、ソニックヘッジホッグ(Shhと略されるHhのホモログ)シグナル伝達の調節不全は、発達異常および多様ながんに関連する。Hhによるシグナル伝達はHhのN末端ドメイン(HhN)により媒介される。このドメインは、脂質付加の後に分泌され、Hhの受容体であるPatched(Ptc)と結合することにより、標的遺伝子の発現を引き起こす。HhNは、Ihog(哺乳類のCDO)などの他の細胞表面タンパク質にも結合する。これらのタンパク質は、Hhの転写依存性および転写非依存性の機能を媒介する。McLellanらは、CDOのフィブロネクチンの3番目のIII型ドメインと結合しているShhのN末端ドメイン(ShhN)のX線結晶構造を解析し、この2つのタンパク質間の相互作用について生化学的解析を行った。HhとShh、およびそれぞれの結合パートナーであるIhogとCDOの配列に類似性がみられるにもかかわらず、IhogとCDOとの結合にそれぞれ関与するHhとShhの表面部分には重複がほとんどなかった。さらに、ShhNとCDOの間の相互作用は、HhとIhogの間の相互作用とは異なり、ShhNへのCa2+の結合に依存した。Ca2+の結合部位は多くのHhファミリータンパク質で保存されていたが、脊椎動物Hhタンパク質のCDOやPtcなどの他の結合パートナーとの結合にのみ影響するようであった。さらに、ヒトShhとインディアンヘッジホッグ(Ihh)のタンパク質のCa2+結合部位における遺伝子配列の突然変異は、それぞれ全前脳胞症と短指症A1型という発達異常に関連する。ショウジョウバエの場合と比べて、脊椎動物での種々のHh結合様式の確立が相互作用を調節するさまざまな機序の進化を可能にしてきたと著者らは示唆する。

J. S. McLellan, X. Zheng, G. Hauk, R. Ghirlando, P. A. Beachy, D. J. Leahy, The mode of Hedgehog binding to Ihog homologues is not conserved across different phyla. Nature 455, 979-983 (2008). [PubMed]

J. F. Foley, Not So Homologous? Sci. Signal. 1, ec360 (2008).

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