代謝
飢えをしのぐ

Metabolism
Staving Off Hunger

Editor's Choice

Sci. Signal., 20 January 2009
Vol. 2, Issue 54, p. ec19
[DOI: 10.1126/scisignal.254ec19]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 飢餓は多細胞生物に全身性の変化を引き起こす。KangおよびAveryは、線虫Caenorhabditis elegansにおいて、複数のアミノ酸がこのような応答を調節するシグナルとして働くことについて報告する。Gタンパク質βサブユニットをコードするgpb-2の機能喪失型変異がホモ接合性である動物は、飢餓に対して高感受性である。ほとんどの変異動物は、4日間の絶食後に食物があっても回復することができず、咽頭におけるオートファジーの亢進を呈する。gpb-2変異体を、絶食前にロイシン、グルタミン、アラニン、バリン、またはイソロイシンを含むアミノ酸含有緩衝液に短時間浸して処理すると、4日間の絶食後に回復することができた動物個体数が増加し、咽頭のオートファジーが減少した。代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR)はアミノ酸を感知することができるので、著者らはmGluRがこの効果を媒介するかどうかについて検討した。mgl-1及びmgl-2はmGluRをコードする遺伝子であり、どちらか一方の変異によって飢餓に対する高感受性と咽頭のオートファジーが部分的に抑制され、両者の変異によって相加効果が得られた。gpb-2mgl-1変異体またはgpb-2mgl-2変異体では、アミノ酸処理により回復における相加効果が認められたが、gpb-2mgl-1mgl-2の3重変異体にはアミノ酸処理の効果が認められなかった。このことは、アミノ酸シグナルはいずれかの受容体によって伝達される可能性を示唆する。さらに、野生型線虫における絶食実験から、これら5つのアミノ酸はMGL-1とMGL-2を介してシグナルを送り、正常な動物の飢餓応答を抑制することが示された。MGL-1は食物の存在下で活性化されるAIYニューロンにおいてのみ必要であり、MGL-2は食物の非存在下で活性化されるAIBニューロンにおいてのみ必要であった。著者らは、ロイシン、グルタミン、アラニン、バリン、およびイソロイシンは、知覚ニューロンにおいてmGluRを介してシグナル伝達を誘導し、飢餓に対する全身性応答を調節する飢餓抵抗性シグナルであると結論付けている。

C. Kang, L. Avery, Systemic regulation of starvation response in Caenorhabditis elegans. Genes Dev. 23, 12-17 (2009). [Abstract] [Full Text]

A. M. VanHook, Staving Off Hunger. Sci. Signal. 2, ec19 (2009).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ