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神経科学 興奮にさらなる実体を

Neuroscience
More Substance to Excitation

Editor's Choice

Sci. Signal., 10 February 2009
Vol. 2, Issue 57, p. ec46
[DOI: 10.1126/scisignal.257ec46]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : サブスタンスP(SP)は、SP作動性陽イオンチャネル電流(ISP)を介してニューロンの緩徐な興奮を引き起こす神経ペプチドである。この緩徐な興奮に関与する機構は、チャネルの正体も含めて不明である。Luらは、ニューロンの陽イオンチャネルであるNALCNが、SPの作用の仲介において果たす役割を検討した。パッチクランプ記録によって、野生型(WT)マウスの海馬錐体ニューロンではSPに応答して内向きNa+電流が発生し、この電流はSPのGタンパク質共役型受容体TACR1のアンタゴニストによって遮断されたが、Nalcn-/-マウスではSPに対する応答がみられないことが示された。Nalcn-/-ニューロンの応答は、Nalcnをコードするプラスミドの導入によりレスキューされた。GTPまたはGDPのアナログを用いて、Gタンパク質をそれぞれ「オン」または「オフ」のコンホメーションに固定しても、ISPに対する影響はなかったことから、TACR1はISPに必要であるが、通常のGタンパク質シグナル伝達は必要ないことが示唆された。Srcファミリーチロシンキナーゼ(SFK)阻害剤のPP1はニューロンにおいてISPを遮断したが、SFK活性化因子は内向き電流(ISrc)を誘発し、この電流がプラトーに達するとニューロンはSPに応答しなくなった。Nalcn-/-マウスのニューロンでは、ISrcは発生しなかった。WTマウスの腹側被蓋野ドパミン作動性ニューロンにおける活動電位はSPによって上昇したが、Nalcn-/-マウスでは電位上昇はみられず、SPが媒介するニューロン興奮性の調節におけるNALCNの役割が証明された。TACR1とNALCNを発現しているHEK 293T細胞では、大きなISPは検出されなかった。しかし、タンパク質UNC-80の遺伝子は他の種においてNalcnと相互作用するとされ、これまで特性がわかっていなかったこのUNC-80が同時発現すると、細胞はSPに応答するようになり、これはPP1によって遮断可能であった。これらのデータを総合すると、NALCNは、UNC-80が関与するGタンパク質非依存性でSrc依存性の様式でSPによって活性化される陽イオンチャネルであることが示唆される。

B. Lu, Y. Su, S. Das, H. Wang, Y. Wang, J. Liu, D. Ren, Peptide neurotransmitters activate a cation channel complex of NALCN and UNC-80. Nature 457, 741-744 (2009). [PubMed]

J. F. Foley, More Substance to Excitation. Sci. Signal. 2, ec46 (2009).

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