生理学 
腎臓が臭うぞ

Physiology
Smelly Kidneys

Editor's Choice

Sci. Signal., 17 February 2009
Vol. 2, Issue 58, p. ec56
[DOI: 10.1126/scisignal.258ec56]

L. Bryan Ray

Science, Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 哺乳類の嗅覚は、環境に存在する膨大な数の化学物質を特異的に検知することができる。こうした検知は、1000を超える膨大な数の嗅覚受容体によって成し遂げられる。これらの嗅覚受容体はいずれも、ヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)によって、アデニル酸シクラーゼの特定のアイソフォームAC3と共役している。Pluznickらは、この精巧なシステムは他の目的(特に、腎臓を通じてろ過される細胞外の体液に含まれる化学成分の検知)にも利用されているのではないかと考えた。Pluznickらは、マウスの腎臓において嗅覚に特異的なGタンパク質(olfactory G protein:Golf)およびAC3をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を検出し、Golfタンパク質およびAC3タンパク質の存在を免疫ブロット法で確認した。免疫組織化学的検査によって、AC3とGolfが緻密斑(マクラデンサ)細胞に局在化することがわかった。緻密斑の細胞は酵素レニンを分泌することによって腎糸球体ろ過率を部分的に制御する。AC3のノックアウトマウスでは、腎糸球体ろ過率が低下し、血中のレニン量が減少したが、これはおそらく腎臓のレニン分泌量が減少したためだと考えられる。腎臓に見られる6つの嗅覚受容体のリガンドは明らかでない。しかし著者らは、腎臓が代謝産物、体内から排出すべき生体異物、腎結石の形成につながりかねないジカルボン酸など、さまざまな化学物質の存在に応答していると考えれば理にかなうことを示唆している。

J. L. Pluznick, D.-J. Zou, X. Zhang, Q. Yan, D. J. Rodriguez-Gil, C. Eisner, E. Wells, C. A. Greer, T. Wang, S. Firestein, J. Schnermann, M. J. Caplan, Functional expression of the olfactory signaling system in the kidney. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106, 2059-2064 (2009). [Abstract] [Full Text]

L. B. Ray, Smelly Kidneys. Sci. Signal. 2, ec56 (2009).

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