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微生物学 
芽胞のライフライン

Microbiology
A Spore’s Lifeline

Editor's Choice

Sci. Signal., 28 April 2009
Vol. 2, Issue 68, p. ec144
[DOI: 10.1126/scisignal.268ec144]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 細菌の芽胞形成は、まず非対称細胞分裂によって、母細胞と前駆芽胞が形成される。前駆芽胞は母細胞より小さく、母細胞に取り込まれている。その後、細胞内シグナル伝達イベントにより、前駆芽胞が成熟、母細胞が分解して休眠内生胞子が形成される。前駆芽胞において膜貫通タンパク質をコードするspoIIQの発現、および母細胞におけるspoIIQオペロンの転写を促進するσEの活性化には、前駆芽胞内のσF転写因子の活性化が必要である。母細胞由来の8つのspoIIAコード蛋白質(SpoIIIAA-SpoIIIAH)および前駆芽胞由来のSpoIIQが、前駆芽胞におけるσGの活性化に必要なチャンネル様複合体を形成する。CampおよびLosickは、各種変異体成分を取り入れたチャンネルの芽胞形成促進能によって評価した結果、この複合体の会合、適切な局在化および機能にはSpoIIQの細胞外ドメインが必要であることを示した。これまで認識されていなかった前駆芽胞におけるσF活性後期、および前駆芽胞で異所性に発現させたT7 RNAポリメラーゼの、芽胞形成期の初期ではなく後期のレポーター遺伝子からのβガラクトシダーゼ産生促進能にはこの複合体の存在および適切な会合が必要であった。機能チャンネルが存在しない芽胞形成後期ではT7 RNAポリメラーゼがβガラクトシダーゼ産生を促進しなかったことから、前駆芽胞は芽胞形成が進むにつれ、それ自体の生合成活性促進能を失うと考えられる。このチャンネルは、継続的高分子合成に必要なアミノ酸やヌクレオチドなどの小分子の母細胞から前駆芽胞への輸送を可能にするという点で、真核細胞のギャップ結合と同様の機能を有すると考えられた。これらの所見から、母細胞から前駆細胞への特異的σG調整因子の通過を否定するものではないが、両細胞間のシグナル伝達が母細胞からの非選択的分子輸送によって前駆細胞の発生を促進していることが示唆される。

A. H. Camp, R. Losick, A feeding tube model for activation of a cell-specific transcription factor during sporulation in Bacillus subtilis. Genes Dev. 23, 1014-1024 (2009). [Abstract] [Full Text]

A. M. VanHook, A Spore’s Lifeline. Sci. Signal. 2, ec144 (2009).

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