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高血圧
肥厚化のおかげで透けて見えた? 血圧に関する内部情報

Hypertension
The Skinny on Blood Pressure?

Editor's Choice

Sci. Signal., 12 May 2009
Vol. 2, Issue 70, p. ec160
[DOI: 10.1126/scisignal.270ec160]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 塩分濃度の高い食事(高塩食high-salt diet:HSD)が一部の人に対して高血圧を促進しうることは数十年前から認知されているが、その背景にある機構は完全にはわかっていない(Marvarら参照)。Machnikらは、HSDを餌として与えられたラットでは、毛細リンパ管網が過形成され、それは皮膚における間質単核食細胞系(mononuclear phagocyte system:MPS)の細胞数の増加と、間質Na+蓄積量と連動する皮膚の水分量および電解質含有量の変化を伴うことを発見した。浸潤性MPS細胞のほとんどは、血管内皮増殖因子C(VEGF-C、リンパ脈管新生を促進する)に対して免疫反応を示した。MPS細胞を欠乏させると、HSD誘導性の毛細リンパ管網の過形成が阻害されるとともに、HSD誘導性の皮膚内VEGF-C量および転写因子TonEBP(浸透圧応答性エンハンサー結合タンパク質)量の増大も阻害された。さらに、MPS細胞の欠乏は、HSD誘導性の平均動脈圧の上昇を増悪させるとともに、HSD誘導性の皮膚の細胞外容量の増大と細胞内容量の減少を引き起こした。同様に、VEGF受容体3(VEGFR3)の可溶性コンストラクトによってVEGF-Cシグナル伝達を遮断すると、HSDに引き起こされるリンパ管の過形成が抑制され、血圧に対するHSDの効果は増悪された。HSDは内皮型一酸化窒素合成酵素の量を増大させたが、この効果はMPS細胞の欠乏によっても、可溶性VEGFR3コントラストによっても抑制された。VEGF-Cと同じく、TonEBPも皮膚MPS細胞に存在していた。配列解析の結果、Vegfcプロモーターには2つのTonEBP結合配列が存在することがわかり、電気泳動移動度シフト解析法とクロマチン免疫沈降法の両方によって、培養マクロファージでは、高塩濃度培養液条件下でTonEBPのVegfcプロモーターへの結合が増加することが示された。さらに、高塩濃度培養液はマクロファージのVEGF-CとTonEBPのmRNAとタンパク質の量を増大させた。TonEBPを過剰発現させると、高塩濃度培養液のVEGF-Cに対する効果とよく似た効果がみられたのに対して、TonEBPをノックダウンするとこの効果は遮断された。興味深いことに、治療抵抗性高血圧患者の血漿は、正常血圧の対照者の血漿に比べてVEGF-C濃度が高かった。著者らは、マクロファージ依存性のVEGF-Cの分泌が、HSDに応答する血圧ホメオスタシスの仲介役として重要な役割を果たしていると提唱している。

A. Machnik, W. Neuhofer, J. Jantsch, A. Dahlmann, T. Tammela, K. Machura, J.-K. Park, F.-X. Beck, D. N. Müller, W. Derer, J. Goss, A. Ziomber, P. Dietsch, H. Wagner, N. van Rooijen, A. Kurtz, K. F. Hilgers, K. Alitalo, K.-U. Eckardt, F. C. Luft, D. Kerjaschki, J. Titze, Macrophages regulate salt-dependent volume and blood pressure by a vascular endothelial growth factor-C-dependent buffering mechanism. Nat. Med. 15, 545-552 (2009). [PubMed]
P. J. Marvar, F. J. Gordon, D. G. Harrison, Blood pressure control: Salt gets under your skin. Nat. Med. 15, 487-488 (2009). [PubMed]

E. M. Adler, The Skinny on Blood Pressure? Sci. Signal. 2, ec160 (2009).

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