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骨芽細胞の機能
バランスの是正

Osteoblast Function
Redressing the Balance

Editor's Choice

Sci. Signal., 16 June 2009
Vol. 2, Issue 75, p. ec198
[DOI: 10.1126/scisignal.275ec198]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 成体動物における骨密度の維持は、骨を形成する骨芽細胞と骨を再吸収する破骨細胞の活性のバランスに依存する。骨粗鬆症では、新たな骨の形成が骨が再吸収されるペースに追いつくことができず、骨密度の正味の損失がもたらされる。破骨細胞の機能における核因子κB(NF-κB)の役割は十分にわかっているが、骨芽細胞の機能における可能性のある役割は不明である。Changらは、分化した骨芽細胞において活性のあるプロモーターの制御下で、IKK-DN〔NF-κBの活性化を阻害するIκBキナーゼγ(IKK-γ)のドミナントネガティブ(DN)型〕を発現するトランスジェニックマウスを作製した。海綿骨の密度および体積は、2週齢および4週齢において、IKK-DNマウスのほうが野生型(WT)マウスよりも大きかったが、骨芽細胞数に差はなかった。リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムRT−PCR)アッセイによって、骨形成に必要な遺伝子は、WTマウスと比較してIKK-DNマウスで高発現していることが示された。破骨細胞の数および機能は、両群のマウスで類似していた。骨形成に不可欠なAP-1ファミリーのFra-1は、WTマウスと比較してIKK-DNマウスに豊富に存在し、Fra-1のノックダウンによりIKK-DNマウスの骨密度が低下した。マウスの卵巣を除去することで、閉経後骨粗鬆症を模倣する骨喪失モデルが作製された。卵巣切除WTマウスでは海綿骨の密度および体積が予想通りに喪失したが、卵巣切除IKK-DNマウスにおける骨喪失の程度ははるかに小さかった。したがって、著者らは、閉経後骨粗鬆症に起因する骨密度低下に対する治療法として、NF-κB活性の阻害を提案する。

J. Chang, Z. Wang, E. Tang, Z. Fan, L. McCauley, R. Franceschi, K. Guan, P. H. Krebsbach, C.-Y. Wang, Inhibition of osteoblastic bone formation by nuclear factor-κB. Nat. Med. 15, 682-689 (2009). [PubMed]

J. F. Foley, Redressing the Balance. Sci. Signal. 2, ec198 (2009).

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