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Sci. Signal., 1 September 2009
Vol. 2, Issue 86, p. ec288
[DOI: 10.1126/scisignal.286ec288]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 低分子干渉RNA(siRNA)やマイクロRNA(miRNA)のような低分子非翻訳RNA(small noncoding RNA)は、mRNAを標的にして分解することによって遺伝子発現を調節する。低分子RNAが細胞から細胞へ移行する機構が、植物および線虫には存在する。しかし、哺乳類細胞から分泌される小胞内に低分子RNAが発見されたものの、哺乳類細胞では類似する経路は明らかになっていない。Rechaviらは、ヒトBL2 B細胞からT細胞株への低分子RNAの移行に関する細胞接触依存性機構について検討した。フローサイトメトリー解析によって、共培養において、BL2細胞に導入された蛍光標識miRNA様オリゴヌクレオチドが、T細胞へと移行することが示された。緑色蛍光タンパク質(GFP)は、導入されたBL2細胞からT細胞へとは移行しなかったことから、オリゴヌクレオチドの細胞間移行は選択的であることが示唆される。標識低分子RNAの反対方向への移行、すなわち導入されたT細胞からBL2細胞への移行も起こった。半透膜によってBL2細胞とT細胞を隔てると、標識低分子RNAの移行がほぼ完全に遮断された。供与細胞と受容細胞の相互作用を増強する条件は、低分子RNAの移行効率を増大させた。エプスタイン・バーウイルス(EBV)を保持するB細胞株であるRaji細胞とT細胞を共培養すると、T細胞画分の配列解析により、EBV特異的miRNAの移行が検出された。最後に、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)は、導入されたB細胞からT細胞へ移行し、レポーターアッセイによって移行したshRNAが機能的であることが示された。総合すると、これらのデータから、遺伝子発現を非自律的に調節する可能性がある低分子RNAの移行に関する細胞接触依存性機構が示唆される。

O. Rechavi, Y. Erlich, H. Amram, L. Flomenblit, F. V. Karginov, I. Goldstein, G. J. Hannon, Y. Kloog, Cell contact-dependent acquisition of cellular and viral nonautonomously encoded small RNAs. Genes Dev. 23, 1971-1979 (2009). [Abstract] [Full Text]

J. F. Foley, Pass It On. Sci. Signal. 2, ec288 (2009).

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