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植物生物学
彼と彼女たちの受容体

Plant Biology
His and Hers Receptors

Editor's Choice

Sci. Signal., 22 September 2009
Vol. 2, Issue 89, p. ec309
[DOI: 10.1126/scisignal.289ec309]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 顕花植物では、雄性配偶体(花粉)が発芽して花粉管を形成し、花粉管が雌しべを通って伸長し、雌性配偶体に到達したところで破裂して精細胞を胚珠に届けると、受精が起こる。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の雌性配偶体では、花粉管伸長とそれに続く受精過程を終結させるために、受容体様チロシンキナーゼ(receptor-like tyrosine kinase:RLK)のFERが必要であるが、受精に必要な雄性配偶体特異的な因子についてはほとんどわかっていない。Boisson-Dernierらは、雄性配偶体において花粉管伸長に必要な、FERに関連する2つのRLKであるANX1とANX2を同定した。マイクロアレイ解析と逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)解析によって、anx1anx2は花粉で発現し、導入遺伝子にコードされたANX1とANX2の蛍光融合タンパク質は、花粉管の先端の細胞膜に豊富に存在することが示された。ANX1またはANX2のいずれかの変異は受精に影響を及ぼすことはなかったが、anx1;anx2二重変異体は雄性不稔性であった。また、anx1;anx2型の花粉は野生型の雌しべで発芽したが、伸長または雌性配偶体の受精が認められなかった。in vitroの花粉管測定において、anx1;anx2型の花粉は発芽して花粉管伸長を開始したが、この変異花粉管は野生型または単一変異体の花粉管と比べて伸長が遅く、早期に破裂した。anx1;anx2変異花粉の花粉管破裂は、形態的には野生型と同様であり、変異体では花粉管破裂のタイミングのみが影響を受けることが示唆された。著者らは、雄性配偶体におけるRLKのANX1およびANX2を介するシグナル伝達が花粉管伸長を維持しており、この経路を介するシグナル伝達は、花粉管が雌性配偶体に到達すると不活性化され、それによって花粉管を破裂させ、積荷である精細胞を届けていると提唱している。

A. Boisson-Dernier, S. Roy, K. Kritsas, M. A. Grobei, M. Jaciubek, J. I. Schroeder, U. Grossniklaus, Disruption of the pollen-expressed FERONIA homologs ANXUR1 and ANXUR2 triggers pollen tube discharge. Development 136, 3279-3288 (2009). [Abstract] [Full Text]

A. M. VanHook, His and Hers Receptors. Sci. Signal. 2, ec309 (2009).

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