• ホーム
  • 細胞生物学 ストレスの多い骨形成

細胞生物学 
ストレスの多い骨形成

Cell Biology
Stressful Bone Building

Editor's Choice

Sci. Signal., 13 October 2009
Vol. 2, Issue 92, p. ec330
[DOI: 10.1126/scisignal.292ec330]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 折り畳まれていないタンパク質が小胞体に蓄積すると、変性タンパク質応答(unfolded protein response:UPR)が誘発され、小胞体ストレストランスデューサーがシグナルを核に伝達し、UPR応答性遺伝子の発現と小胞体でのタンパク質分解を引き起こす。Murakamiらは、小胞体ストレストランスデューサーのOASISが欠損したマウスを作製し、これらのマウスが成長遅延を示し、野生型マウスよりも脆弱な骨格をもつことを見いだした。OASIS-/-マウスと野生型マウスの間で、破骨細胞(骨を分解する細胞)の数には差がなかったが、OASIS-/-マウスでは骨芽細胞(骨を形成する細胞)が少なかった。OASIS-/-の骨芽細胞には、プロコラーゲン1α1などの骨基質タンパク質が蓄積して肥大化した小胞体が認められた。I型コラーゲンをコードするCol1a1などの骨基質タンパク質をコードする遺伝子のmRNA存在量は、野生型マウスの骨よりOASIS-/-マウスの骨で少なかった。レポーターアッセイとバイオインフォマティクス解析では、OASISまたはそのN末端領域がCol1a1のプロモーターに結合し、その発現を促進していることが示された。骨芽細胞内のOASIS mRNAの存在量は少なかったが、細胞を小胞体ストレスまたは骨形成タンパク質2(BMP2)にさらすと増加した。これらの処理によって、OASISタンパク質のプロセシングと、そのN末端領域の核への移行も促進された。BMP2は野生型の骨芽細胞においてCol1a1の発現を誘導したが、OASIS-/-の骨芽細胞ではそのような誘導はみられず、OASIS-/-骨芽細胞では野生型細胞と比べて、BMP2に応答して産生されるコラーゲン線維が少なかった。これらのデータを総合すると、小胞体ストレス応答は、UPRを終結させるだけでなく、骨形成にも関与していることが示唆される。これをもとに著者らは、他の小胞体ストレストランスデューサーの特性を解明することによって、小胞体ストレス応答の生理的役割がさらに明らかになるのではないかと提案している。

T. Murakami, A. Saito, S.-i. Hino, S. Kondo, S. Kanemoto, K. Chihara, H. Sekiya, K. Tsumagari, K. Ochiai, K. Yoshinaga, M. Saitoh, R. Nishimura, T. Yoneda, I. Kou, T. Furuichi, S. Ikegawa, M. Ikawa, M. Okabe, A. Wanaka, K. Imaizumi, Signalling mediated by the endoplasmic reticulum stress transducer OASIS is involved in bone formation. Nat. Cell Biol. 11, 1205-1211 (2009). [PubMed]

J. F. Foley, Stressful Bone Building. Sci. Signal. 2, ec330 (2009).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ