免疫学
T細胞、Nodを獲得

Immunology
T Cells Get the Nod

Editor's Choice

Sci. Signal., 24 November 2009
Vol. 2, Issue 98, p. ec375
[DOI: 10.1126/scisignal.298ec375]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : Nod2は、ヌクレオチド結合オリゴマー形成ドメイン受容体(NLR)ファミリーの一員であり、微生物産物に結合し、病原体に対する自然免疫応答を媒介する細胞内で鍵となる役割を果たす。Shawらの報告によると、Nod2は獲得免疫応答の一部を担うT細胞でも機能し、細胞内寄生虫トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)に対する有効な応答を開始させる。Nod2欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、トキソプラズマ感染後の生存が低下した。意外なことに、自然免疫細胞においてNod2シグナル伝達に必要なカスパーゼ動員ドメイン含有キナーゼ(caspase-recruitment domain-containing kinase)Ripk2を欠損した感染マウスの生存は低下しなかった。腹腔滲出細胞を検討したところ、感染初期にはNod2欠損マウスと野生型マウスの寄生虫負荷は同等に低かったが、12日後にはNod2欠損マウスの感染負荷のほうがはるかに高いことが示された。Nod2欠損マウスは、感染の7日後に血液中のインターフェロン-γ(IFN-γ)濃度が低下していた。ナチュラルキラー細胞およびヘルパーT細胞1(TH1)はいずれも、有効な免疫応答に必要不可欠なサイトカインIFN-γの主要な供給源である。感染に対するNK細胞の応答は、Nod2欠損マウスと野生型マウスで同じであるようであったが、Nod2欠損マウスではTH1細胞がはるかに少なかった。野生型およびNod2欠損の樹状細胞を用いたさまざまな実験、ならびに野生型およびNod2欠損T細胞のレシピエントマウスへの導入から、TH1細胞の異常はT細胞に固有のものであり、樹状細胞の機能不全の結果ではないことが実証された。野生型T細胞を動物に導入すると、トキソプラズマ感染に応答するNod2欠損マウスの生存が改善した。野生型T細胞と比較して、Nod2欠損T細胞は、T細胞の分化に重要なサイトカインであるインターロイキン-2(IL-2)を十分に産生できず、ヘルパーT細胞の分化を促進できなかった。IL-2をコードする遺伝子は、転写因子NF-κBの標的である。この遺伝子を繊維芽細胞株にトランスフェクションすると、NF-κBのサブユニットの1つ(c-Rel)、NF-κB誘導キナーゼ(NIK)、およびNod2が免疫共沈降した。さらに、Jurkat T細胞にトランスフフェクションしたところ、3つの遺伝子(c-Rel、NIK、およびNod2)が同時に発現すると、NF-κBレポーター遺伝子が最大に活性化されたことから、3つのタンパク質が相乗作用を示し、遺伝子発現を促進したことが示唆された。NF-κBシグナル伝達の異常と一致して、Nod2欠損T細胞では、野生型細胞と比較して、刺激後のc-Relの核移行が減少していた。したがって、Nod2はT細胞分化において、獲得免疫系に機能をもつと考えられ、この役割は、自然免疫系におけるパターン認識受容体としての役割とは無関係であるようである(Salek-ArdakaniおよびCroftの論説参照)。

S. Salek-Ardakani, M. Croft, T cells need Nod too? Nat. Immunol. 10, 1231-1233 (2009). [PubMed]

N. R. Gough, T Cells Get the Nod. Sci. Signal. 2, ec375 (2009).

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