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一重項酸素のシグナル伝達:身近なところから広範囲まで

Singlet Oxygen Signaling: From Intimate to Global

Perspectives

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 221, pp. pe7, 24 February 2004
[DOI: 10.1126/stke.2212004pe7]

Irene E. Kochevar*

Wellman Center for Photomedicine, Massachusetts General Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA 02114, USA.
*Corresponding author. E-mail: kochevar@helix.mgh.harvard.edu

要約 : 過酸化水素、一酸化窒素、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素などの活性酸素種(ROS)は、細胞を傷害するだけでなく、新たな遺伝子発現などの応答を開始させることもある。誘発される細胞応答は、いくつかの要因に強く依存している。ROSは細胞分子と反応するまでに非常に短い距離しか拡散できないため、ROSが形成される細胞での場所は、活性の高いROSにとって特に重要である可能性がある。短寿命で局所作用性のROSは、どのようにして遠く離れた細胞内部位での応答を誘発するのであろうか? この問題が、一重項酸素により開始される遺伝子発現の研究に照らして論じられている。一重項酸素はROSの一種で、細胞内で100 ns以内しか存在しない。一重項酸素は、光感作物質が光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを酸素分子に伝達すると発生する。シロイヌナズナ(Arabidopsis)の光誘導性の遺伝子発現における一重項酸素の役割を評価するため、葉緑体内に光感作物質のプロトクロロフィリドを蓄積するある変異体を用いた。一重項酸素の形成部位とシグナル伝達成分を結びつけると考えられる、3つの機構が論じられている:(i) 一重項酸素によりシグナル伝達成分が直接酸化される、(ii) 一重項酸素形成部位の近傍で酸化生成物が形成され、これが拡散してシグナル伝達成分と反応する、(iii) 細胞の酸化還元平衡がより高い酸化状態に移動し、その結果より高い割合のシグナル伝達経路成分が酸化される。

I. E. Kochevar, Singlet Oxygen Signaling: From Intimate to Global. Sci. STKE 2004, pe7 (2004).

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