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スポーツにおけるデザイナーアンドロゲン:いくらあっても足りない場合
Designer Androgens in Sport: When Too Much Is Never Enough
Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 244,
pp. pe41, 3 August 2004
[DOI: 10.1126/stke.2442004pe41]
David J. Handelsman*
ANZAC Research Institute, Sydney, NSW 2139, Australia.*Contact information. E-mail: djh@anzac.edu.au
要約 : スポーツドーピング剤として初めての真の「デザイナーアンドロゲン」であるテトラハイドロゲストリノン(THG)が近ごろ同定されたことは、医学分野でのデザイナーアンドロゲンの未知なる可能性を意味するとともに、驚くほど巧妙に不正をはたらいた製造施設や、エリートスポーツにおけるアンドロゲン不正使用者の地下組織の存在を反映している。THGは、市場には出回らず、国際オリンピック委員会が定める従来の尿のスポーツドーピング検査では検出できない強力なアンドロゲンとして開発されたと考えられている。不特定の混入物を含んだ強力なアンドロゲンおよびプロゲスチンとして、事前の生物学的・毒物学的評価なしに大量摂取を目的に流通することは、深刻な健康上のリスクをもたらす。一方、この科学の転用は、デザイナーアンドロゲンをヒト医学に利用できる見通しも明らかにしている。さらに、デザイナーアンドロゲンには、アンドロゲンの有益な効果を増す一方で望ましくない効果を減らす組織特異的な効果をもたらす可能性がある。さらなる開発を進めるためには、エストロゲンのパーシャル・アゴニスト(SERM)の組織特異性の基礎をなすメカニズムに匹敵するぐらいに、アンドロゲンの受容体後の組織選択性をよく理解することが必要である。この経験から、エリートスポーツの公正と安全を維持するため、引き続き警戒して新規の薬物ドーピング法の検出にあたる必要があることが分かる。そのためには、特定のドーピング剤に対するマススペクトロメトリーによる検査の開発と併せて、高感度で特異的なin vitroアンドロゲンバイオアッセイなどの包括的なキャッチオール検査を整備することが必要であろう。
D. J. Handelsman, Designer Androgens in Sport: When Too Much Is Never Enough. Sci. STKE 2004, pe41 (2004).