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狡猾な離れ業:真核生物の翻訳開始のもう一つの機序

A Cunning Stunt: An Alternative Mechanism of Eukaryotic Translation Initiation

Perspectives

Sci. Signal., 24 June 2008
Vol. 1, Issue 25, p. pe32
[DOI: 10.1126/scisignal.125pe32]

Simon J. Morley* and Mark J. Coldwell

Department of Biochemistry, School of Life Sciences, University of Sussex, Brighton BN1 9QG, UK.
*Corresponding author. E-mail, s.j.morley@sussex.ac.uk

要約 : 細胞ストレスはシグナル伝達経路を活性化させ、細胞が生存するか、アポトーシスするかの選択を可能にする。翻訳は、de novoの遺伝子発現に速やかな生理応答性変化をもたらすことにより、この選択のバランスを保つうえでの重要な役割を果たしている。細胞性アポトーシス阻害タンパク質2(cIAP2)の定常状態の存在量は、様々な細胞ストレスに応答して増大する。このモジュラータンパク質はバキュロウイルスIAP繰り返し(BIR)モチーフに加えてユビキチンタンパク質リガーゼ(E3)活性を有し、この活性によりカスパーゼに直接結合すること、また転写因子である核内因子κB(NF-κB)の活性化を調節することが可能になる。cIAP2をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)は、真の開始コドンの上流に64個もの開始コドンを含む高度に組織化された5’非翻訳領域(5’UTR)を有する5.5 kbの分子量の大きな転写産物である。cIAP2は、植物パラレトロウイルスで最初に報告された、5’UTRの阻害配列の大部分を回避するためにリボソームが短絡するという特殊なキャップ依存性の機構を用いている。さらに、哺乳類細胞において不明な点が多いこのcIAP2の翻訳機構は、植物細胞ではこの過程に必須であることが知られているパラレトロウイルスがコードするタンパク質の非存在下で、軽度のストレスにより促進される。本稿では、ウイルスタンパク質非存在下におけるストレス媒介性の短絡過程をcIAP2がどのように利用しているかについて議論する。この過程は、ストレス中の翻訳制御において標準的な開始因子、配列内リボソーム進入配列特異的トランス活性化因子およびmRNA構造がより広範な役割を果たしていることを示唆している。

S. J. Morley, M. J. Coldwell, A Cunning Stunt: An Alternative Mechanism of Eukaryotic Translation Initiation. Sci. Signal. 1, pe32 (2008).

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