Treg(制御性T細胞):免疫応答の制御細胞
By Hemacare Corporation
ヒトの免疫系はウィルスや細菌に感染した細胞やがん細胞などの“非自己”を攻撃して破壊する能力を持っています。しかしながら、適切な制御機構が働いていないと、非自己の細胞だけでなく健康な自己の細胞も破壊してしまい、自己免疫疾患を引き起こします。Treg(制御性T細胞)は、そういった自己免疫疾患や健康な細胞に対する誤った破壊を防ぐために、免疫系を負に制御し、免疫系の恒常性の維持に働いている免疫細胞です(1)。
TregはFOXP3という転写因子を高発現しており、FOXP陽性をマーカーとすることで同定することが出来ます。CD4やCD25という細胞表面マーカーも発現しますが、同様にCD4やCD25を発現しているT細胞サブセットから分離する事が困難であるため、Tregでは発現が低いCD127もマーカーとして使用されています。
Tregを介した免疫応答の制御には複雑で多様な分子機構が寄与していますが、抑制性サイトカインの産生やIL-2、ATP/ADPの阻害といった細胞同士の相互作用に依存しない機構と、細胞溶解、抗原提示細胞の制御といった細胞同士の相互作用に依存する機構に分類することができます。
相互作用に依存する機構では、CD4+/CD25+ エフェクターT細胞が、自身の細胞表面に発現しているCTLA-4を介してTregを抑制する役割を持っている事がわかってきており、マウスT細胞においてCTLA-4細胞の機能を阻害すると自己免疫疾患が引き起こされます(3)。また最近のマウスを用いた報告では、CCR5ケモカインが扁平上皮の悪性腫瘍組織へのTregをリクルートする事が示され、CCR5欠損マウスでは悪性腫瘍組織に対して効果的な免疫応答を得ることが出来る事が示唆されています(2)。
上記のようなTregのリクルートと標的組織の抑制効果についての理解は、特に細胞治療の研究分野で注目されており、得られた知見は臓器移植での拒絶反応や自己免疫疾患など、過剰な免疫反応を抑制するための細胞治療法の開発への応用が期待されています(3)。
Treg研究についての情報はヘマケア社のブログ: www.Hemacare.com/blog/?s=regulatory+t+cellsもご覧ください。
Cosmo Bio would like to acknowledge and thank Hemacare Corporation for providing PBMC description presented here.
References
- Sakaguchi, S, Nature Immunology 6(4):345-352, 2005.
- De Oliveira, CE et al, Molecular Cancer Therapeutics, September, 2017. doi: 10, 1158/1535-7163.MCT-17-0341
- Zwang, NA and Leventhal, JR, Journal of the American Society of Nephrology 28(7), 2017. doi:10.1681/ASN.2016111206