0. RNAscope™全般について
- 【0-01】 RNAscope™はどのような根拠から高感度、特異性が高いと考えられているのですか?原理の参考になるものがあれば教えてください。
- 【0-02】 どのキットを選べばよいかわかりません。各キットの違いを教えてください。
- 【0-03】 マニュアルが見たいのですがどこにありますか?
- 【0-04】 手順を動画で見たいのですが。
- 【0-05】 キットの構成品を単品購入できますか?
- 【0-06】 免疫染色との組み合わせを実施したいのですが?
1. プローブデザイン
- 【1-01】 プローブデザインに必要な配列の長さは?
- 【1-02】 RNAscope™ では mRNA の アイソフォームを検出できますか?
- 【1-03】 miRNA は検出可能ですか?
- 【1-04】 2 種類以上の動物種のターゲットを検出するプローブを作製可能ですか?
- 【1-05】 多重染色のときのプローブの選択方法は?
- 【1-06】 プローブの配列情報や ZZ ペアの位置情報は開示可能ですか?
- 【1-07】 異なるマニュアルアッセイキットで同じプローブを使用可能ですか?
- 【1-08】 プローブはどれくらいの期間安定なんですか?
- 【1-09】 プローブの QC テストは個々のプローブで行われていますか?
- 【1-10】 RNAscope™ アッセイでは、コントロールとしてセンスプローブやアンチセンスプローブが必要ですか?
2. シグナルの観察
- 【2-01】 RNAscope™ でのアッセイ後に、同じサンプルスライドで IHC を行うことは可能ですか?
- 【2-02】 RNAscope™ では RNA のみが検出されますか?(DNA は検出されないのでしょうか?)
- 【2-03】 RNAscope™ でターゲットの発現を確認した組織サンプルについて、qPCR での確認は行っていますか?(in situ-PCR は可能ですか?)
- 【2-04】 RNAscope™ では、fusion transcript を検出できますか?
- 【2-05】 ネガティブコントロールプローブで核が染色されるのですが・・・
- 【2-06】 RNAscope™ は tissue microarrays (TMAs) でも使用できますか?
- 【2-07】 RNAscope™ アッセイでの結果の定量方法は?
- 【2-08】 サンプル組織でポジティブ・ネガティブコントロールプローブでの検出は必要ですか?
3. 組織の準備
- 【3-01】 10% NBF (Neutral Buffered Formalin) の代わりに 4% PFA (paraformaldehyde) は使用できますか?
- 【3-02】 古い FFPE サンプルでも検出可能ですか?
- 【3-03】 固定条件が不十分または過剰な場合、どんな影響がありますか?
- 【3-04】 サンプルの固定条件が適切かどうか分からない場合は?
- 【3-05】 異なる組織の FFPE サンプルで、同一条件で RNAscope™ アッセイを行うことはできますか?
4. ワークフロー
0. RNAscope™全般について
RNAscopeのプローブはZプローブと呼ばれるもので、それらが2つ並んでターゲットのRNAに結合することでZZペアを形成します。
そのZZペアの上部にシグナルの増幅構造が構築されることで、高感度な検出が可能となっています。
RNA scopeの検出用プローブの設計に当たってはメーカー独自のアルゴリズムが用いられ、そのターゲット特異的かつ検出に最適な配列を対象とした検出用プローブが設計されます。
また、25塩基程度を認識するZプローブが2つ横並びに結合した状況でしかシグナルの検出に至らない原理も合わさり、観察されるシグナルは特異的と考えられております。
こちらに原理の説明がございます。また原理の詳細に関しましてはこちらの文献にてご覧頂けます。
こちらにキット選択ガイドがございます。 初めてのお客様はこちらをご覧頂きますよう宜しくお願い致します。
こちらからご覧いただけます。
こちらに各キットの構成品、及び単品購入の可否について記載しております。
単品購入に〇が付いている品番は購入が可能です。
こちらに
に各キットと免疫染色を組み合わせて実施する際の資料やプロトコルがございます。
in situhybridizationの前処理にプロテアーゼ処理が含まれるため、
必ずしもうまくいくとは限らないことを予めご了承頂けますと幸いです。
1. プローブデザイン
配列の特異性に依存しますが、通常は 300 - 1,000 base です。 また、設計領域が長いほどより多くの ZZ ペアが結合(最大で20ZZペア)できるため、高感度のプローブが作製可能となります。
mRNA のアイソフォーム、スプライシングバリアント、特異的なエキソン領域の検出可否は特異的な配列がどの程度含まれるかに依存しますが、300 base 程度の特異的な配列があれば検出できる場合が多くございます。事前に検出可否を確認することもできますので、ご相談ください。
RNAscope™ ではmiRNAを検出することができませんが、別の系でmiRNA検出用のキットがございます。 こちらをご覧ください。
RNAscope™ で多重染色する場合、異なるチャネル(C1, C2, C3) を持つプローブが必要です。2-plex assay ではC1, C2、蛍光アッセイではC1 - C3 がご使用いただけます。詳細は「RNAscope™ キットの選択について」をご参照ください。
ターゲットプローブが設計されているヌクレオチド領域と、領域内に結合する ZZ ペアの数はメーカーHP やプローブリスト内で参照できます。しかしながら、ペアが結合する配列情報は非公開です。
はい、発色アッセイや蛍光アッセイキットでは同じ C1 プローブを使用可能ですし、C2 プローブは 2- プレックスや蛍光アッセイに使用可能です。しかしながら、マニュアルアッセイとオートメーションアッセイのプローブは組成が異なるため流用できません。また VS プローブと LS プローブも流用できません。
Advanced Cell Diagnostics社のプローブデザインアルゴリズムは RNAscope™ のハイブリダイゼーション温度に最適な融解温度で、かつ非特異的なハイブリダイゼーションが最小限になるような配列を抽出しています。詳細は下記文献をご参照下さい。
Wang et al, J Mol Diagn. 2012 Jan; 14(1): 22-9 RNAscope: a novel in situ RNA analysis platform for formalin-fixed, paraffin-embedded tissues.
PMID:2216654
非常に正確なプローブデザインアルゴリズムであるため、個別のプローブについてバリデートは行っておりません。
RNAscope™ では、得られたシグナルの特異性を確認・判断するために、ターゲットプローブだけでなく、併せてポジティブコントロールプローブとネガティブコントロールプローブをお使いいただく必要があります。ポジティブコントロールプローブとして、低発現の遺伝子で RT-PCR のコントロールとしても用いられている PPIB(Cyclophilin B)や、POLR2A(polymerase (RNA) II (DNA directed) polypeptide A)を、また、ネガティブコントロールとしてはヒト・マウス・ラット等に交差しない、微生物由来の DapB(dihydrodipicolinate reductase)をターゲットとしたプローブをご用意しております。DapB プローブはセンスプローブの代わりに、種を問わずお使いいただけるネガティブコントロールになります。近年、多くのアンチセンス RNA が様々な機能を持った non-coding RNA として同定されていることから、センスプローブではなく DapB プローブを、ネガティブコントロールとしてお勧めしております。
2. シグナルの観察
同じサンプルスライドで IHC を行われているお客様はいらっしゃいますが、推奨のプロトコールは確立されておりません。抗原の状態によっては、RNAscope™ と IHC を併用できる可能性はありますが、RNAscope™ アッセイの pretreatment 中に行われるプロテアーゼ処理で抗原タンパクがダメージを受けている場合は、IHC による検出ができない可能性が考えられます。一般的に、細胞表面上の抗原よりも細胞質内の抗原の方が検出できる可能性が高いものと考えられますが、お客様ご自身で条件を検討していただく必要があります。
RNAscope™ はRNA の検出に最適化されており、プローブの核への浸透を最小限に抑え、二本鎖染色体 DNA の変性を引き起こさないようアッセイ条件が設定されています。
原理的には可能であると考えられますが、実績はございません。
RNAscope™ では、fusion transcript の検出実績があります。詳細は、下記文献をご覧下さい。
Tanas MR et al., Identification of a disease-defining gene fusion in epithelioid hemangioendothelioma. Sci Transl Med. 2011
PMID: 21885404
ネガティブコントロールプローブによる核染色は、透過処理が過剰だった場合によく見られる現象で、原因としてはPretreatment (Pretreat 2 または 3 での処理)、また、組織サンプルの固定条件が最適でない可能性が考えられます(推奨固定条件:10% NBF (Neutral Buffered Formalin)、16 - 32 時間、室温)。組織毎のPretreatment 条件の詳細はマニュアル「Formalin-Fixed Paraffin-Embedded (FFPE) Sample Preparation and Pretreatment 」のAppendix A をご参照ください。
はい、RNAscope™ は、適切に固定・処理されたものであれば、個別の組織サンプル同様に TMAs でもお使いいただけますが、前処理条件の最適化が必要となる場合が考えられます。由来組織毎に Pretreatment 条件が若干異なりますので、詳細はマニュアル「Formalin-Fixed Paraffin-Embedded (FFPE) Sample Preparation and Pretreatment 」をご参照ください。
RNAscope™ では個々の RNA 分子が1 つのドットとして検出されます。そのドットの数を計測することにより定量的に扱うことができます。
RNAscope™ でのアッセイを予定される以前に作製された組織サンプルは、推奨の固定条件とは異なる固定条件で処理された場合が多いものと思われます。また、作製から時間の経ったサンプルでは、組織中の RNA が劣化していることも知られています。 サンプル組織でのポジティブ・ネガティブコントロールプローブでの検出は必須ではありませんが、ポジティブコントロールプローブ(PPIB またはPOLR2A)サンプル中の RNA の状態を、ネガティブコントロール(DapB)の使用では、スライドの前処理が適切に行われたかどうかを評価することができます。
ポジティブコントロールのスコアが 1+、かつネガティブコントロールでのスコアが 0 であれば、サンプル調製およびアッセイは適切にワークしており、サンプル組織中のターゲットの発現は正しく評価されているとお考えください。(スコアリングについては、シグナルの解析法についてをご覧ください。)
3. 組織の準備
はい、Advanced Cell Diagnostics社では 10% NBF、室温、16 - 32 時間の固定条件を強く推奨しておりますが、用時調製した 4% PFA のご使用は可能です。しかしながら、固定条件は 24 時間、室温にて行ってください。24 時間以下、または低温条件の場合、固定が不十分となる可能性があります。
詳細は下記マニュアルをご参考下さい。
「Formalin-Fixed Paraffin-Embedded (FFPE) Sample Preparation and Pretreatment 」
希少な事例ですが、10 年以上前に作製された FFPE サンプルでの検出実績もございます。すべての切片で同様に検出が可能というわけではございませんが、3 年以内であれば検出できる可能性が高いです。まずはポジティブコントロールにて十分なシグナルが得られることをご確認ください。
固定条件が不十分な場合、プロテアーゼによる過剰分解が起こり、RNA の損失や組織形態(Morphology)に影響を及ぼす可能性があります。また、固定条件が過剰な場合は、プロテアーゼ分解が不十分となるため、プローブとターゲット RNA の接触性が低下し、特異的シグナルの減少またはS/N比が低下する可能性があります。
推奨条件と異なる固定条件を使用されている場合は、推奨マニュアルをご参照の上、Pretreatment 2 および 3 の条件を調整して条件を最適化する必要があります。最適化する際は実験コントロールとして、ポジティブコントロールプローブおよびネガティブコントロールプローブにてポジティブコントロールスライドを染色してください。
詳細は下記マニュアルをご参考下さい。
「Formalin-Fixed Paraffin-Embedded (FFPE) Sample Preparation and Pretreatment 」
組織の種類によって、Pretreat 2、Pretreat 3 での最適条件が異なる場合があります。下記マニュアル中に組織ごとの推奨条件の記載がありますので、そちらをご参照の上、お持ちの組織によって条件検討・最適化を行ってください。
「Formalin-Fixed Paraffin-Embedded (FFPE) Sample Preparation and Pretreatment 」
4. ワークフロー
一般的な免疫染色に近いプロトコールになっており、in situ ハイブリダイゼーションを行ったことが無い方でも簡単に染色が可能です。また、従来の in situ ハイブリダイゼーションのように数日かけて染色を行う必要はなく、約 8 時間でアッセイを終了することができます。
こちらにアッセイの動画がございますので併せてご覧ください。
反応中の温度および湿度が最も大きく影響します。HybEZ™ hybridization system は RNAscope™ アッセイにバリデートされた唯一のオーブンですので、使用を強く推奨いたします。また、Pretreatment 中のプロテアーゼ処理が不十分な場合も、プローブと組織中のターゲットの接触が難しくなるため、特異的シグナルの減少およびバックグラウンドの原因となります。逆に、プロテアーゼ処理が過剰な場合は、組織の形態に影響が生じ、組織中の RNA をロスする原因となります。
いいえ、分子生物学用グレードの蒸留水(DW)をお使いいただければ問題ありません。同様に、DEPC 水(DiEthly PyroCarbonate 処理水)のご用意も必要ありません。
RNAscope™ アッセイ向けに開発された HybEZ™ hybridization system(以下「HybEZ™」)のご使用を強く推奨しております。
RNAscope™ では各ステップでの反応温度が重要になりますが、HybEZ™ は一般的なオーブンと比べて密閉性に優れ、ステップごとのスライドの出し入れによる温度変化を最小限に抑えるよう工夫されております。また、スライドラックは密閉型のトレイに収納するようデザインされており、アッセイの開始から終了まで、湿潤・恒温状態を保つことが可能です。HybEZ™ 以外のオーブンでも RNAscope™ アッセイの実施は可能ですが、同社内の試験では、他社オーブンより HybEZ™ での結果が良好であるため、Advanced Cell Diagnostics社では、HybEZ™ 以外のオーブンでの結果については、RNAscope™ の性能を保証しておりません。