エクソソームは生体を構成するほぼすべての細胞から分泌される直径30~200nmの小胞で、血液や尿などあらゆる体液中に存在します(1)〜(5)。また、in vitroでは動物細胞の培養上清にも分泌されます。エクソソームは細胞と同様に脂質二重膜に包まれており、その表面には膜タンパクが存在し、また、内部にはタンパク質やマイクロRNAなどが包含されています。エクソソームを取り込んだ標的細胞において、これらのタンパク質やマイクロRNAが機能することによって、エクソソームは細胞間のコミュニケーションを担っていると考えられます(6)。エクソソームの構造上の特徴の一つとして表面上に存在するテトラスパニンファミリーが挙げられます。CD9、CD63及びCD81はそのメンバー分子で、エクソソームの表面マーカーでもあります(7)。
ヒト間葉系幹細胞(human Mesenchymal Stem Cells, hMSC)は、組織再生活性と免疫調節活性の両方を備えた多能性細胞であり、細胞治療の魅力的なツールとなっています。ここ数年、hMSCの有益な効果はパラクリン効果によるものであり、少なくとも部分的には細胞外小胞(エクソソームなど)によって媒介される可能性があることが示されています(8), (9)。
エクソソームの定量法としては、エクソソームが含むタンパク量で代替したり、ナノトラッキング法による粒子解析がありますが(10)、これらの方法は超遠心法などで一旦エクソソームを精製する必要があります。体液中や細胞培養液中のエクソソームを直接定量する手段は極めて限られており、これまで一般的な方法は開発されてきませんでした。
本キットは、hMSCでもっとも発現量が多いとされているテトラスパニンであるCD63及びMSC由来エクソソーム・マーカーとして提案されているCD90(11)に対するそれぞれの高性能抗体を利用し、ヒトMSCが分泌するCD90陽性かつCD63陽性エクソソームを検出する2ステップサンドイッチELISAキットです。