■ フローサイトメトリーとは?
フローサイトメトリー(flow cytometry)とは、不均一な細胞サンプル中に含まれる特定の細胞集団・細胞群・細胞種を同定するための解析技術であり、免疫学、分子生物学、微生物学、がんや感染症等の幅広い研究分野で重要な実験手法となっています。フローサイトメトリー解析では、一列に並べられて流路系を通過していく個々の細胞に対してレーザーを照射することで、細胞の大きさ、細胞数、各種マーカーの発現有無/発現レベルを解析・測定することができます。細胞マーカーの解析においては、一般的に細胞表面(細胞外)に発現するマーカー(例. CDマーカー)の解析が頻繁に行われ、蛍光色素で標識された抗体を生細胞(未固定サンプル)に添加することで実施されます(図1)。

図1. 細胞表面マーカー・タンパク質を検出する一般的なフローサイトメトリー解析の手順
■ 細胞内フローサイトメトリーとは?
細胞内フローサイトメトリー(Intracellular flow cytometry)とは、細胞表面マーカーではなく、転写因子/核内抗原または細胞質に局在するタンパク質を検出するための実験手法です。細胞表面マーカーのみを染色する従来のフローサイトメトリーとは異なり、細胞内フローサイトメトリーはリン酸化シグナル伝達因子、転写因子、サイトカイン等の細胞内のターゲットタンパク質を同時に染色できるため、さらに詳細な表現型を解析するためのパワフルな手法になり得ます。細胞表面マーカーのみを検出する場合とは異なり、細胞内に存在するタンパク質を検出する場合、追加の手順として細胞の固定処理・透過処理を施す必要があります。固定処理・透過処理を実施することで、蛍光色素で標識された抗体が細胞膜および核膜を透過して、細胞内のターゲットタンパク質を染色することができます(図2)。

図2. 細胞質/核タンパク質を検出する細胞内フローサイトメトリー解析の手順