■ 抗体実験のコントロールについて
抗体試薬は、通常であれば特定の抗原やタンパク質に結合しますが、他のタンパク質や細胞成分に非特異的な結合を示す場合があります。抗体によるオフターゲットすなわち非特異的結合は、抗原特異的染色とバックグラウンド染色の判別を困難にするため、『偽陽性』の結果を招く原因となります。したがって、信頼できる結果を保証するには、染色に用いた抗体がオフターゲットを示すかどうかを判断するための実験的なコントロールを常に含めることが重要です。
■ アイソタイプコントロールとは?
アイソタイプコントロールは、抗体染色実験のネガティブコントロールとして使用される抗体です。アイソタイプコントロールは、実験で使用される一次抗体と同じ免疫グロブリン(Ig)クラス/サブクラスを持つ一方、目的タンパク質に対する特異性を欠いています。

図. ターゲットに対して結合性を持つ標識一次抗体(左)と結合性を持たないアイソタイプコントロール(右)
抗体試薬は、他のタンパク質、内因性酵素、脂質、およびFc受容体に非特異的に結合する可能性があります。アイソタイプコントロールを使用することによって、抗体による特異的染色とバックグラウンド染色を区別することができます。また、プロトコールのブロッキングや洗浄ステップが十分であるかどうかの判断にも有用です。
■ アイソタイプコントロールの選び方は?
アイソタイプコントロールの『宿主動物(免疫動物)』『免疫グロブリン(Ig)クラス/サブクラス(アイソタイプ)』『標識物質』は、使用する一次抗体と同じである必要があります。
- 宿主動物(免疫動物)
- 免疫グロブリン(Ig)クラス/サブクラス
- 標識物質(ビオチン、HRP、蛍光色素等)
例えば、FITC標識されたマウス由来IgG2bをアイソタイプに持つ抗体を一次抗体に用いる場合は、FITC標識されたマウス由来IgG2bアイソタイプコントロール抗体を選択します。
非標識の一次抗体を二次抗体で検出する場合は、非標識のアイソタイプコントロールを選択します。さらに、二次抗体のみのコントロール(一次抗体をPBS等のブランクにして二次抗体のみで染色する)を追加することで、二次抗体のバックグラウンド染色を決定します。

図. ターゲットに対して結合性を持つ一次抗体+標識二次抗体(左)と結合性を持たないアイソタイプコントロール+標識二次抗体(右)