エクソソームや微小胞の単離は、エクソソーム分野の全ての研究者にとって主要なテーマです。近年エクソソーム単離において、様々な方法が検討されています。
超遠心分離法
遠心分離法はゴールドスタンダードであると考えられており、微小胞単離の最も一般的な方法、かつ、体液や馴化培地からの単離方法として広く用いられている手法です。様々なプロトコルが用いられていますが、一般的に複数のステップで構成されています。最初に低速で死細胞や大きなアポトーシス断片を除きます。次に(研究者により様々ではあるが)、遠心力1,000〜20,000×g で大きな小胞や破片を除きます。最後に超遠心分離(100,000×g 以上)で沈殿させます。
密度勾配超遠心分離法
密度勾配(OptiPrep™、ショ糖等)を用いて超遠心分離を行い、浮遊密度の違いにより小胞を分離します。ショ糖密度勾配は小胞の密度、収量を大幅に改善し、異なるサイズの小胞を高純度で分離できます。
超遠心分離法
長所 | 短所 |
高純度 |
時間を要する |
血漿、培養上清などに適応 |
超遠心機が必要 |
純度を上げるための精製(洗浄)が可能 |
比較的回収率が低い(全母集団の5〜25%) |
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相応の検体量を要する(2 mL以上) |
HansaBioMedで販売している凍結乾燥エクソソームスタンダードは、超遠心分離法により単離しており、エクソソーム研究において様々なアプリケーションにご使用いただけます。
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免疫アフィニティ法
免疫アフィニティ法は、小胞単離のアプローチとして研究者から注目されてきています。抗体がコートされたラテックスや磁気ビーズは、速くて簡単な手法です。トータルエクソソームの母集団の単離に複数の小胞で見られるテトラスパニンに対する抗体がよく使われているが、免疫アフィニティ法の最も興味深い点は、とある病的状態にのみ発現する特定の抗原に対する抗体を用いる事で、その病的状態特異的なエクソソームを単離できる可能性がある事です。免疫アフィニティ法によるアプローチは、ビーズの使用に限らず、ELISAにも用いる事が可能です。
HansaBioMed社では、体液や培養上清由来の様々なエクソソームに特異的に反応する抗体を用いたプレコートのELISAプレートをExoTEST™として販売しています。全てのエクソソームに共通な、または細胞の種類や細胞の(病的)状態に特異的なエクソソームに関連した抗原を検出するという意味で、この商品はエクソソームタンパク質の定量や特徴付けが可能です。
免疫アフィニティ法
長所 | 短所 |
速くて容易 |
大容量の検体には不向き |
高純度 |
抗体と小胞の分離が困難 |
その後の解析に対し、 有用な部分的母集団を回収できる可能性がある |
検体(培養上清等)の濃度が薄い場合、 濃縮の必要がある |
異なるアプリケーションに対応可能 (基本は抗体を用いるため) |
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化学的沈降法
様々なバイオ関連企業が化学的沈降法による小胞分離用試薬を開発しており、小胞を凝集させる試薬を使用しています。試薬を加え、氷上で短時間インキュベートした後、一般的な遠心分離法(遠心力10,000×g 程度)でエクソソームを分離します。この方法は非常に簡単で、少量の検体からでもエクソソームを単離できます。しかし、単離が選択的では無く、また、血中タンパク質が小胞と共沈降してしまう傾向があります。
化学的沈降法
長所 | 短所 |
速くて容易 |
超遠心分離法に比べ、低純度 |
少量の検体からの単離が可能(例:血漿 100 µL) |
血中タンパク質が共沈降する傾向がある |
培養上清や体液に適応 |
部分母集団の単離には不向き |
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小胞ペレットの懸濁が困難 |
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大容量の検体には不向き |
サイズ排除クロマトグラフィー法
この手法は高純度エクソソームの単離法として近年注目されている、速くて容易な方法です。セファロース充填カラムを用い、所要時間は30分程度が主流です。この手法は、その後の解析を阻害するようなタンパク質を含む、血漿のような複合マトリクスからの小胞の単離に特に有用で、血中タンパク質を含む画分と小胞を含む画分を分離する事が可能です。また、少量の検体(500〜2,000 µL)からの単離に適しており、大容量には不向きです。加えて、エクソソームは高純度ですが、濃度は低くなる傾向にあります。
サイズ排除クロマトグラフィー法
長所 | 短所 |
速くて容易 |
単離した小胞が低濃度 |
高純度 |
大容量の検体に不向き |
少量の検体に適応 |
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エクソソーム単離法のまとめ
手法 | 純度 | 収量 | 循環タンパク質の収量 | 所要時間 | 簡便性 | 部分母集団の単離 | タンパク質プロファイリングへの適用 | 核酸プロファイリングへの適用 | コスト |
超遠心分離法 |
++++ |
++ |
++ |
++++ |
+ |
不可 |
++++ |
++++ |
++++ |
免疫アフィニティ法 |
+++ |
++ |
++ |
++ |
+++ |
可 |
+++ |
++++ |
+++ |
化学的沈降法 |
++ |
+++ |
+++ |
+ |
++++ |
不可 |
++ |
++++ |
++ |
サイズ排除 クロマトグラフィー法 |
++++ |
+++ |
+ |
+ |
++++ |
不可 |
++++ |
++++ |
+++ |