脂質は単なる静的な膜構成成分としての機能だけでなく、複雑な細胞内シグナル伝達や膜輸送に関与することが明らかになっています。近年では潜在的な治療ターゲットとしてますます研究が進んでいます。このような脂質生物学への関心の高まりに対し、その機能を可視化し理解するための適切なツールが必要です。Echelon Biosciences社では、ICCやIHCを含む様々なアプリケーションで使用可能な脂質抗体を提供しています。
脂質の細胞免疫染色
脂質はタンパク質に比べてサイズが小さく、独自の構造的特徴がないため抗体作製は難しいと考えられがちですが、天然脂質に対する内因性の抗体産生の結果である抗リン脂質症候群(APS)などの疾患もあるように、抗脂質抗体は実現可能です。
ただし、技術の観点からは、タンパク質では考慮されないことが多い免疫染色脂質については、注意しなければならない特定の注意点があります。
脂質の免疫組織染色
免疫組織化学(IHC)は、組織サンプル内の標的を視覚化するための一般的な手法です。組織の取り扱いには特別な考慮事項がありますが、基本的には細胞染色と同様であり、固定、ブロッキング、一次抗体および二次抗体による染色、というプロトコルで共通です。
タンパク質抗体と脂質抗体の相違点は、パラフィン包埋サンプルからの抗原回復技術が脂質ターゲットの場合困難であることです。これは主に、熱による賦活化処理によりサンプル中の一部の脂質の相転移温度を超えてしまい、サンプルが本来の膜から除去/剥離する可能性があるためです。そのため、脂質を抗体で染色する場合は、一般に凍結組織サンプルを使用することが推奨されます。