抗体染色実験に最適！固定剤フリーの溶血試薬 赤血球溶解バッファー（RBC Lysis Buffer）

赤血球溶解バッファー（RBC Lysis Buffer、Red blood cell Lysis Buffer）は、塩化アンモニウムをベースとした溶血バッファーです。単細胞懸濁液中の赤血球を特異的に溶解することができ、白血球の濃縮のほかにフローサイトメトリー等の抗体染色実験に利用できます。固定剤が含まれないため、赤血球以外の細胞の生存への影響を最小限に抑えながら溶血処理を行えます。

■ 塩化アンモニウムによる赤血球溶解の原理

全血中の赤血球数は白血球数に比べて非常に多く、その存在比は約600:1〜700:1とされています［MSDマニュアル：血液の構成要素 ］。血液中におけるリンパ球や単球等の白血球の研究・解析を実施する場合、サンプルへの赤血球のコンタミネーションが実験結果に干渉するおそれがあるため、サンプル調製時に赤血球を溶解する等して除去する必要があります。その際全血サンプルの赤血球のみを選択的に溶解することで、白血球の濃縮が可能になります。

赤血球（RBC：Red blood cell）は、等張の塩化アンモニウム緩衝液にさらされると膨潤し、最終的に溶解（溶血）します。塩化アンモニウムによる溶血の律速因子はAE1（Anion exchanger 1、アニオン交換輸送体1、band 3）であることが知られています［PMID：18083194 ］。AE1と構造的複合体を形成する細胞表面糖タンパク質であるRhAGによって赤血球（RBC）へのアンモニア/アンモニウム（NH₃／NH₄⁺）流入が媒介されることが報告されています［DOI：10.1134/S1990747816040097 ］。

• 全血サンプル中の赤血球の選択的溶解／白血球の濃縮が可能
• 固定剤を含まないため、赤血球以外の細胞生存への影響は最小限
• 得られた白血球は、フローサイトメトリー実験や核酸抽出等の各種アプリケーションに適用可能
• 濃縮タイプ（10倍）として提供

■ 赤血球溶解バッファー（10x）の希釈・調製

赤血球溶解バッファー（10x）に蒸留水／精製水を加えてワーキング溶液（1x）を調製します。

■ 赤血球溶解バッファーを用いた抗体染色実験手順（例）

1. サンプルチューブに全血サンプルを50〜100 µL分注してください。
2. 染色用の蛍光色素標識抗体をサンプルに直接加え、十分に混合します。
3. 遮光し、室温で30分間インキュベートします。
4. 室温の赤血球溶解バッファー（1x）を2 mL加え、非常に短時間（5秒以内）ボルテックスをして混和します。
5. 遮光し、室温で10〜15分間インキュベートします。
6. 細胞を500 xgで5分間、室温で遠心します。
7. 慎重に上清を除去し、1〜2 mLのStain Bufferで細胞を1回洗浄します。
   （Stain Buffer：1x PBS with 2% FBS, 0.09% Na-Azide）
8. 細胞を500 xgで5分間、室温で遠心し、上清を除去します。後続の解析に適したバッファーおよび容量で再懸濁します。

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