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ジャスモン酸生合成経路
Jasmonate Biochemical Pathway
Sci. Signal., 16 February 2010
Vol. 3, Issue 109, p. cm3
[DOI: 10.1126/scisignal.3109cm3]
Aurelie Gfeller1, Lucie Dubugnon2, Robin Liechti3, and Edward E. Farmer1*
1 Current contributing authorities, Gene Expression Laboratory, Department of Plant Molecular Biology, Faculty of Biology and Medicine, University of Lausanne, Biophore, CH-1015 Lausanne, Switzerland.
2 Former contributing authority, Institut de Chimie Clinique, CH-1002 Lausanne, Switzerland.
3 Former contributing authority, Swiss Institute of Bioinformatics, Vital-IT Group, Genopode, CH-1015 Lausanne, Switzerland.
* Corresponding author. E-mail, edward.farmer@unil.ch
要約:植物には、脂肪酸に由来する、強力な創傷応答および発生の調節因子ファミリーであるジャスモン酸エステルが備わっている。これらの化合物はトリ不飽和脂肪酸であるα-リノレン酸(18:3)に由来し、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)やトマトなどの植物では、7(Z)- , 10(Z)- , 13(Z)- ヘキサデカトリエン酸(hexadecatrienoic acid)(16:3)に由来する。リポキシゲナーゼの触媒によって酸素分子がα-リノレン酸に付加されると、アレンオキシド合成酵素(AOS)による不 安定なアレンオキシドの生成に必要な13-ヒドロペルオキシド基質が供給され、これによってジャスモン酸合成が開始される。このアレンオキシドは、酵素に よる触媒反応によって環化され、12-オキソフィトジエン酸(OPDA)が生成する。このような第1段階は色素体内で起こるが、これ以降のOPDA代謝は ペルオキシソーム内で起こる。OPDAがたどる運命は幾通りかあり、エステル化されて色素体脂質となる道や12個の炭素からなるプロホルモンのジャスモン 酸(JA)に変換されるという道などがある。JAそのものはさらに多様な修飾基質となり、今でも増えつつあるジャスモン誘導体のなかでも主要な生物活性を もつジャスモン酸であるジャスモノイルイソロイシン(JA-Ile)などが生成する。ジャスモン酸ファミリーの新たなメンバーが発見されるたびに、免疫応 答、創傷に応答して長い距離を伝達されるシグナルの開始と維持、稔性の調節、および他の過程におけるジャスモン酸の代謝回転、不活性化、隔離における、遺 伝子発現の微調整を理解するための新たな鍵が与えられる。
A. Gfeller, L. Dubugnon, R. Liechti, E. E. Farmer, Jasmonate Biochemical Pathway. Sci. Signal. 3, cm3 (2010).